1カンデラの明るさを体験する



カンデラ(candela)とは明るさの単位。

かつて照明として幅広く使われていた蝋燭(candle)の炎の明かりから来ていることは言うまでもない。




1カンデラは蝋燭1本分の明かり。
すなわち1燭光とほぼ一致する。
(1燭光=1.0067カンデラ)




蝋燭の起源は古く、古代エジプト時代にはすでに使われていた形跡もあるとか。

油に火を灯すという原始的な方法は、ガス灯や電球の発明まで、照明の主流でもあった。
日本古来からあるものでは行灯(あんどん)や提灯(ちょうちん)、雪洞(ぼんぼり)があった。

(ガス灯の実用化は1800年頃、電球の発明、実用化は1880年頃)




ベートーベンの時代(1770―1827)もまたしかり。
幼きベートーベンはスパルタ教育な父に蝋燭の明かりの下、夜な夜なピアノの練習をさせられたという。
当時のピアノには、譜面を照らすための蝋燭立てが備わったものもある。


電気のない時代、夜に行われる演奏会や舞踏会。
シャンデリアのように天井から吊るされた燭台に灯す明かりは、今の照明よりずっと暗いものだったに違いない。

演奏会のために火を灯して明かりを取る。
日本ならばさしずめ薪能のようなものか?


その後、舞台照明には石灰光(ライムライト)が使われた歴史もあるが、今や電気の力を使った強烈な明かりで照らし出す。
ホールでの演奏会は電気の照明なくしては語れない。


人々の暮らしは電球や蛍光灯のおかげで、夜でも何不自由なく活動ができる。
しかしひとたび何かが起こり、電気の供給が止まっただけで、今の現代的な暮らしはほとんどの機能がストップしてしまう。
この便利な暮らしは人類史の中ではほんの最近のことなのだ。






こんな時代にこそ、あえてその原点となった明かりを体験してみることにした。






楽譜からおよそ40cmの距離に色々な光源を置き、実際に演奏が可能な明るさなのか検証してみました。

なお、検証画像は肉眼で見たのに出来るだけ近くなるように補正してあります。






蝋燭の明かり

まずは原点ともいえる明かり。

今では蝋燭といえば、仏壇か誕生日か花火かアロマキャンドルか。

そういえば蝋燭を照明として使ったのは初めてかもしれない。


く、暗い!


これが1カンデラなのか?


10cmの距離まで近づけてみた。

蝋燭一本ではこれだけ近づけて譜面が読める程度、かなり厳しい。
もっと近づけると楽譜が燃える。

人間の目がいかに暗順応しようとも、蝋燭一本だけでの演奏は難しい。

あ、昼のうちに練習して暗譜すればいいのか。
それは別問題。



いつもの台所風景。

ぼんやりと明るい。
真っ暗ではないが、少し離れれば辛うじて部屋の中に何があるかわかる程度。
何か作業をしたり読み書きするにはかなり暗い。
昔の暮らしはこのくらいの明るさだったのだろうか。






蝋燭もどき

単3電池2本で豆電球を光らせる擬似蝋燭。
火を使わないので火事になる心配もなく安心です。

まあ仏壇用なので灯明としての明るさではなく、雰囲気作りといった目的ではないか。




とは言うものの・・・

意外と明るい。



近づければ余裕で読める。



周囲が均等に明るくなっているのが判る。

さすが電気の力、電球の発明は偉大だった。





照明が発達した現代でも、あえて暗い中で演奏することもある。
オペラの上演や歌謡ショー、飲食店などでBGMを演奏する時など、譜面灯を使い楽譜だけを照らす。
あまり明るすぎると演出の妨げになるので、適度に暗い照明を使う。
よく使われるのは20〜40wのミシン球かシャンデリア球。






蝋燭もどきLED

100均で売られていた蝋燭もどき。

半透明の筒と本体の蝋燭もどき。
ボタン電池3個でLED(恐らく5mm)を駆動、本物の炎のようにまたたまたたする。
現代のハイテクを駆使した科学の明かり。

光の色は5色あるが、一番本物の炎の色に近い黄色を使用。

半透明の筒は、蝋燭に火屋をかぶせたようになる演出用だが、あえて中身のみを使いました。




大体予測はついておりましたが・・・

お話(ぱなち)にならない暗さ。


近づけてもやっと譜面が見える程度。

本物っぽくまたたくところはリアルでいいのだが、広い範囲を照らすためのものではないようです。



いわゆるムードランプなので、照明としては使えない。

ハイテクを駆使して原始的な光を再現するというのも面白いが、炎に比べて熱をほとんど出さないということが大きな功績だろう。






MAG-LITEミニマグAA

ご存知アメリカのMAG-LITE社のライト。
単3電池2本でクリプトン球を駆動、本体はアルミニウム合金削り出し。
デビュー当時、その驚異的な明るさと高級感あふれる機能美は、たちまちにして小型ライトの王座についた。

 小学生時代、当時は本物のミニマグが5千円ぐらいする超高級品だった時代、ディスカウントストアでミニマグもどきを500円で入手した。
 ヘッドをはずしてテールを差し込んで立てれば周囲を満遍なく照らせることを発見、鬼の首でも取ったよな気分になっていたが、何のことはないキャンドルモードという使用法だった。


これは本物のミニマグ。



おお〜明るいなぁ。

この明るさがあれば何とか演奏は可能だろう。
しいて言えば光源が目に入るので眩しい。



周囲を満遍なく照らします。



MAG-LITE社では、自社のライトの明るさに基準をキャンドルパワーという数値で表している。
1キャンドルパワーは蝋燭1本分の明るさ、まさに1燭光だ。


このミニマグAAは2200キャンドルパワー


しかし、これで本当に蝋燭2200本分の明るさなのか?
蝋燭を2200本立てればこの明るさになるのか?


別のサイトではPBC(ピーク・ビーム・キャンドルパワー)と表示されていた。
これは1.5m離れた地点での明るさの最高値を表しているのだとか。
ということは周りを満遍なく照らす能力ではなく、ビームを絞って中心部の明るさが蝋燭何本分(1燭光の何倍か)ということになのだろう。


この中心の明るさなのね。

電球の光の色は炎の色に比べてだいぶ白いことがわかる。
色温度が違うので、目で見た明るさでの単純比較は難しい。






GENTOS GS-430

単3電池1本で0.5w日亜リゲルを駆動する。
先端はコリメーターレンズで集光、前方を照らす他、筒を伸ばせばランタンとして使用可能。


 
眩しくないようにわざとアルミテープで半分覆ってある。


単3電池1本なのであまり明るくはないが、白色光が新鮮だ。

白い光が白い紙に反射して音符がくっきり見える。



光源が目に入ると非常に眩しい。
LEDのランタンの特徴として、眩しいだけで明るくないという評判もある。


何故だろうか、LEDの光は照らされた所だけが明るく、そこからさらに反射して部屋全体に及ぶことは少ない。

こうして比べるとLEDの光というのは炎や電球の光とは明らかに異質だ。
高効率ゆえにか、実際の明るさではなく、目が錯覚を起こしているような気がする。






灯油ランプ

昔、近所のホームセンターに売られていた安物だが、一時期大活躍していました。


久々に野営セットの中から掘り出してきました。


なんだこりゃ?



油を燃やして明かりを取るために開発された器具。
いわばクラシック照明の王道である。


今や屋外のキャンプなどでしか使うことはないと思われる灯油ランプですが、趣味の明かりとして楽しむ世界もあるようです。

灯油ランプ専門店「江戸川屋ランプ」さんのサイト

 このサイトの豆知識によると、ランタンの明るさは芯の太さに比例し、2分芯(幅7mm)で4w、5分芯(幅15mm)で8w、7分芯(幅21mm)で15w相当の明るさになり、7分芯では本も読めるほどの明るさになるそうです。

 このランタンの芯の幅はほぼ12mm、ということは4分芯になり、明るさは7〜8w相当。
ちなみに家庭用照明の常夜灯として使われるナツメ球は5w。
(wは本来なら消費電力だが、明るさの基準として考えた場合)




うおっ!これは明るい!

この明るさは侮れん。




黄色というかオレンジ色というか、炎の明かりは独特のパワーがある。

部屋全体が明るくなった。


離れたところでも光が届いている。

暗さに目が慣れれば、照明として充分成り立つ明るさ。
7分芯ならこの2倍の明るさ、本も読めそうです。


とは言え、現代の明る過ぎる照明に比べればまだまだ暗い。


炎の明かりというのは、妙に落ち着くような興奮するような、妖しげな魅力がある。
動物の本能では避けるべきもの、しかし必要な明かりでもあり、大切な熱源でもある。

電気が主流なこのご時世に、あえて火を灯すというのも、人間の文明の原点を見るような気がしてなかなかいいもんです。
(火事に注意)






MAG-LITE6D

最後に試したのはマグライト最強、単1電池6本の大型ライト。

キャンドルパワーは公称値なんと20500!

もはやここまで数値が大きくなると実感が沸かず、キャンドルパワーで表す意味があるのか?



ヘッドをはずして電球むき出しで使ってみました。

まぶしいんじゃあああ!

これは演奏どころではない。



なんかギラギラした明るさ。

w数の高い裸電球は、夜店の金魚すくいを髣髴させる明るさ。






あっはっはっはっ・・・
なんか笑える。

先が光る長い棒を持つだけで妙に楽しいのは何故だろう?




部屋全体が明るくなった。
間接照明としても有効。




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