折々のお料理

飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究

夏チョコ冬チョコでは違いがあるのか?



 毎年秋になって涼しくなると、店頭には新作のチョコレートが売り出される。中には冬期限定のチョコもあり、それらは決まって口どけのよさを売りにした柔らかめのチョコだ。
 理由は簡単、チョコは溶けやすいのだ。同じ物を夏に売り出していたら我々の口に入る前にすでに溶けている。

「28℃」

 チョコレートファンの間ではもはや常識として知れ渡っている重要な事項、それは良質のチョコは28℃で溶け始めるということ。

 28℃といえば冷房の省エネ推奨温度ではないか。夏場、当然外は灼熱地獄、チョコレートはまるでアイス並みに管理が必要な食品と言える。
 冷房をあまり使わない我が家では夏場の室温は、昼の夜も28℃を切ることはまれである。夏場に28℃以下の場所を探すほうが難しい。冷房の効いた店内でむいて食ってしまわない限り、買ってから口に入るまでに必ず一度は28℃以上になってしまうはずだ。
 と言うことはチョコ溶けまくりーの、これほど過酷な環境はない。


 しかし夏場であってもチョコは店頭で平然と売られている。

チョコがなかったら世の中大変だ。

もしかすると、
夏場に並んでいるチョコと冬場に並んでいるチョコでは違いがあるのではないか?
そんな疑問が湧いてきた。



 チョコレート言えばM冶。同じようなチョコは数多くあれど、誰もが知っている、昔も今も変わらぬロングセラーM冶ミルクチョコレート。名称、「チョコレート菓子」でも「準チョコレート」でもないチョコレート。純粋な味わいを求めて原材料を選び、伝統のおいしさに磨きをかけた、永遠のピュア(純)チョコレート。すべてのチョコレート製品の王座、代表選手として、実験に参加していただきました。

メーカーから送られてこんかな?
(来るわけねーだろ!)







3つのチョコを用意しました。




8月の真夏の暑い最中、どう考えてもチョコの保存には適さない気候に販売されていたもの。
10月に入り世間には冬向けの新発売のチョコが並び始める頃のもの。
12月の寒い冬になってから買ったもの。






仕入れた時期と店頭に並んでいた期間とのタイムラグが大きくならぬよう、出来るだけ商品の回転が速いと思われるコンビニで入手しました。




「食ってしまいたい!」迫り来る食欲と戦いながら保存をすること数ヶ月。
何度誘惑に負けかけただろうか?それだけでもこの検証は成功したともいえる。

違いがあるのか?という疑問に対して、融点が何℃といった科学的な検証は難しい。
残念ながらうちには料理用の温度計がない。
とにかく違いがあるのか?ここに注目して比べてゆきたい。





賞味期限が書いてある。


都合よく順番に並んでいる。



便宜上、入手した時期により左から夏チョコ、秋チョコ、冬チョコと呼ばせていただきます。


(画像はイメージです。)




パッケージにも微妙に違いがありました。


しかし主要栄養成分表は3枚とも全く同じ、と言うことは違いがないということか?
一抹の不安がよぎる。



開封作業の光景。


普段からは考えられないくらい慎重にむいてゆきます。



中身は見たところ特に違いはない。


色も同じ、匂いも同じ、見た目も形も・・・



ん?

チョコの表面に押された文字の向きが逆ーーーーー!!!

秋チョコが、なぜかパッケージの文字の向きと中のチョコに刻まれた文字の向きが逆になっている。


型が違うだけですね。

どうでもええがな。



ところがどうでもよくなかった!




慎重に切断作業をするが・・・・
割れてしまった。

ええい!もどかしい!いつものようにパキパキじゃあ!
チョコはこうでなければ。



左から夏チョコ、秋チョコ、冬チョコの順。




実食。

う〜ん、美味い。
さすがM冶のミルクチョコレート。いわゆる「チョコレートの基本」といった味わい。
食いすぎと言われようと、鼻血が出ようとやめられん。


たて続けに味わってみたものの、違いが判らず。

特に冬チョコが早く溶けるという印象も感じられず。
やっぱり同じなのか?



皿に乗せて湯煎で少しずつ加熱してみた。


溶け始めた。



あれ?



色!


色が違わんか?




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熱せられたチョコは少しずつ溶け始め、濃い茶色から薄い茶色へと変化してゆく。

明らかに溶け始めの温度が違うということか。

 



少し溶け始めたところで爪楊枝でつついてみると固さが違う。


真ん中のコイツはまだ形を保っている。


ちょっと待て。

少しおかしくないか?


この結果では夏チョコと冬チョコが同じではないか?
推測からすると「真ん中が夏チョコで両端が秋チョコ冬チョコ」、これなら当然の結果といえるが・・・。


皿の縁と真ん中では熱の伝わりが違うもんね〜。


再び並び替えて実験。出来るだけ3つが同じ条件になるように配置。


手前が冬チョコ、左奥が夏チョコ、右奥が秋チョコ。

どうも2:1で違いが表れる。
やはり秋チョコが溶けにくい。

結果は同じであった。

しかしどういうわけだ?
季節と一致していない。




(仮説)
保管中に順番を間違えた。←(超有力)
賞味期限は順番に並んでいるが製造時期が違うのだろうか?



いずれにせよ夏チョコ冬チョコという明らかな結果ではないにしろ、何らかの違いがあるということがわかった。



秋チョコ=表面の文字が逆のバージョン=溶けにくい



溶けやすさに違いがあるということは、固まりやすさにも違いがあるはず。


チョコレートは一たび溶けてから固まると、脂分が表面で白く固まるファットブルームという現象が起きる。
子供の頃、カビと勘違いしてメーカーに送ったら、替わりのチョコが2個も送られてきて凄くうれしかった。
(チョコレートは含有水分量がほとんどないためカビないらしい。)

 チョコレートを使ってお菓子作りをした人ならご存知とは思いますが、チョコレートを一定の温度に保ちながら練って品質を安定させるというテンパリングと言う作業。この温度調節が最も大切なことだという。
 色々と調べてみると、ココアバターの結晶の性質がT型からX型まであり市販のチョコレートはX型、その結晶がX型からW型に相転移することによってブルーム現象が起きるのだとか。

つまり温度管理を間違えば、たちまちブルーム現象。
「食っても問題はないが風味の面では劣ります」ってやつ。

わざわざ不味くしてどうすんねん!
という気がしないでもないが、実験の為、意図的にブルームってみましょうか!



一度溶けたものを冷凍庫で冷やしてみた。


固まったものの、特に表面が白くなるようなことはない。

失敗か?
(この場合ブルーム現象が起こらないこと)



もう一度加熱してみた。


今度は容赦なく、原形をとどめるのがやっとというくらい暖めてみました。



室内でゆっくり冷ましてみました。


固さチェックを理由につまみ食いした跡があります。
やはり溶けにくかった秋チョコは早く固くなるものの、その後どれも同じように固まった。
結果は変わらず・・・。

結局その後再び冷凍庫で冷やしてみたがブルーム現象は起きず。




・・・・・。



もう耐えられません。
(食ってしまいました。)


口の中の温度ではどれも同じように溶けた。溶け始める微妙な温度の違いだけで、実際に比べてみても違いはほとんどないといってもいいほどだった。

しかしこれだけ加熱冷却を繰り返してもブルーム現象が起きない。
調べた所、どうも研究によってこのブルーム現象が起きにくくなる物質が発見され、恐らくこのチョコレートにも添加されているものとみられる。
恐るべしM冶!



と言うことは、市販のチョコを溶かして手作りチョコを作ろうとした場合、ブルーム現象が起きにくいこのM冶のミルクチョコレートは最適ということではないか?




一つの謎。
刻印が逆バージョンについて・・・

 今回の実験では、季節の区別はともかくとして(すでに自信がありませんので・・・)表面の刻印が逆のバージョンだけが違いがあった。他の二つよりもわずかに溶けにくかったことから、本来夏だけこの逆バージョンが売り出されていると言うことなら納得が行く。

しかし・・・

冷静に考えるとこのパッケージ、外の紙とチョコを直接包む銀紙は接着されておらず、横にスライドさせれば出てくる。
ということは、どれでも向きを変えてまた戻せば逆バージョンが出来上がる。


しかし店頭でそんなことが起こるのか?
それともメーカーとしてはパッケージの向きには特にこだわりがなく、これは単なる偶然か?



念には念を入れて、さらに新しいチョコを入手しました。


これは大切な実験である。
だからあえてたくさんのチョコを食べなければならない。


賞味期限と製造番号一覧。


左から夏チョコ、秋チョコ、冬チョコ、そして一番右は今回新たに入手したチョコ。
区別のために新年チョコとでも呼びましょうか。

もはやその季節分類の信憑性も疑わしい結果だったが、混乱を避けるためあくまで最初の呼び方で統一します。
新年チョコは、夏チョコ冬チョコ同様、中の刻印の向きは同じだった。


手前左から夏チョコ、時計回りに秋チョコ、冬チョコ、新年チョコの順番。


どうもやはり文字の逆バージョン(秋チョコ)のみが何かが違う。


ちょっと加熱しすぎて全部溶けてしまったが・・・



本当にチョコの向きで区別がされているのか?

真相を確かめるには再び夏まで待たなければならない・・・。


続く→夏チョコ冬チョコ再び



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さらに・・・

 チョコレートについて、色々調べてゆくと、市販のチョコを使った手作りチョコにたどり着く。チョコレートは思った以上に気難しいとみえ、色々と溶かし方や温度調節が難しいらしい。中でも湯煎で溶かしているときに水や蒸気がわずかでも混入するとぼそぼそになってしまうのだとか・・・。

「ぼそぼそ」

パサパサ、べしゃべしゃ、ギトギト、しゃびしゃび。食品の不美味な様子を表すのによく使われる言葉であるが、聞いただけで何となくどのように不美味か想像がつく。

チョコレートがぼそぼそ。



 ぼそぼそのチョコレートなど、見たことも食ったこともない。チョコレートと言えばあの食感。確かに、チョコレートは市販のものをそのまま口に運ぶだけなので、料理のように失敗したものを見かけることがない。果たしてぼそぼそのチョコレートとはどんな状態なのか?

さらに新しいチョコを入手しました。実験の為なのでしかたがない。

新年チョコは食ってしまいました。


湯煎にかけて溶かします。あえて間違ったことを試すのでなるべく少量にします。

ちなみに今回新たに入手したチョコの刻印も逆ではなかった。


溶けてきました。


そのまま溶かしただけの状態。なめらかにどろーんとしています。暖かいチョコクリームといった感じ。

(さじはなめてしまった。)


あえて水を一滴加えます。

※よい子はまねをしないでね。


おりょ?

なんか固まってきた。

不なめらか!

 
さじにひっついてとれんのよ。

なるほど、確かにうまく溶けませんね。


さらに水を加えてみます。

※よい子はまねをしないでね。


図解!これがぼそぼそだ!


もう味噌味噌状態。



なんか固い・・・。

 一方、なべの中は、そのまま熱を加えていると水分が飛んで元に戻るかと思ったが、固くなって土鍋にひっついてしまった。(こそいで全部食いました。)


冷凍庫で冷やして食ってみました。


すごく皿にひっついている。

真ん中の水を一滴加えたものは粉々した舌触り、口の中で溶けてゆくのにムラがある。
左に至ってはほとんど拳骨飴の食感。

違いは口に放り込んだ時の舌触り、溶けてゆく感覚の違いといったところでしょうか?
しかし、最終的には口の中でどれも同じように溶ける。

味はどれも変わらず美味でした。

(なんでもいいんかい!?)



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