折々のお料理
飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究 |
大根おろしはゆっくりおろす方が辛くない?
大根おろしはゆっくりおろすほうが辛くない。
うむ、知っているしそんなことは有名な話である。
しかし冒頭の質問は辛いのか辛くないのか迷うところだ。
日本語は難しい。
しかしあえて問いただしてみよう、それは本当なのか?
「ゆっくりやさしく円を描くように」ってどのくらいやさしくすれば辛くなくなるんよ、ええ、言うてみー!?
そして、ゆっくりってどれくらいよ?
この時大事なのは、どのくらいのスピードで動かすのか?
どのくらいの速さでおろすのか、具体的に数値で違いをつける必要がある。
というわけでメトロノーム。
おろし金の上を往復させるスピードを設定しておく。
速いおろし速度はテンポ120。
つまりおろし金の上から初めて下へ行き再び上に戻ってくるまでの時間が120。
テンポ60は1分間に60拍、テンポ120とは1秒間に2往復するスピードだ。
まあやってみるとそんなに速いスピードではない。
いつもやっているのがこのくらいのスピードか。
反対にゆっくりおろす場合、テンポ30にした。
およそ2秒で1往復のスピードだ。
大根をおろすにはかなり遅い。
ちなみに大根は部位によって辛さに差が出るというので、公平になるように部位を分けました。
とうわけで、4つのパターンを用意してみました。
まず素早くおろしたものとゆっくりおろしたもの。
そして圧力が多いものと少ないもの。
エントリーナンバー1、低速弱圧おろし。
予想では最も辛くない低速弱圧おろし。
しゃーりしゃーりとゆっくり、焦らず軽ーく、しかしなかなか時間がががる。
エントリーナンバー2、低速強圧おろし。
ごーりごーりゆっくりと、しかし圧力は強く、大変力が要る作業だ。
正直これがもっとも辛(から)くないと言われてもあまりやりたくないくらいおろすのが辛(つら)い。
エントリーナンバー3、高速弱圧おろし。
しゃかしゃかと素早く、軽快におろす。圧力が少ないとなかなか終わらない。
なんかあぶくだらけになってしまうが。
エントリーナンバー4、高速強圧おろし。
ガシガシと力強く、あっという間に完了する。
いつもこの方法だ。
さてこれらで辛味を比べて見ると・・・。
まずは低速弱圧おろし。
あれ?けっこう辛いぞ。
仰せのとおりゆっくりおろしたのに、これはひょっとすると都市伝説ではないかと思える事態発生。
辛味バロメーター
辛くない ← ★★★☆☆ → 辛い
続いて高速弱圧おろし。
あ、やっぱりさっきのよりも辛い。
やはりゆっくりおろすと辛くないというのは本当だった。
しかし比べると確かに判るのだが、いずれにせよどちらも辛い。
辛味バロメーター
辛くない ← ★★★★☆ → 辛い
最後は高速強圧おろし。
予想通り、か、辛れぇ!
なるほど、いつもの大根おろしだが、これは辛いわ。
辛味バロメーター
辛くない ← ★★★★★ → 辛い
予想通りの結果となったが、難しいのは問題は真ん中の二つ。
低速弱圧おろし・・・★★★☆☆
高速弱圧おろし・・・★★★★☆
低速強圧おろし・・・★★★★☆
高速強圧おろし・・・★★★★★
正直どっちも結構辛くて区別がつきにくい。
だいぶ舌がやられてきて、正確な判断が難しくなってきた。
そのまま室温にて15分間放置。
おんや?
低速弱圧おろし・・・☆☆☆☆☆
高速弱圧おろし・・・★☆☆☆☆
低速強圧おろし・・・★★☆☆☆
高速強圧おろし・・・★★★☆☆
ちょっと放置しただけで辛味がほとんどなくなってしまっている。
やはり辛味成分は揮発性だということがよくわかる。
低速弱圧おろしはもはやほとんど辛味はなく、甘いとさえ感じるほどに。
ここにきて真ん中の二つに差が出た。
おろす圧力が強いほど粒子も粗く歯ごたえがあり、噛むと辛味が生きてくる。
さらに30分放置、作り置き状態。
もはや辛味成分はほとんど飛んでしまったようだ。
低速弱圧おろし・・・☆☆☆☆☆
高速弱圧おろし・・・☆☆☆☆☆
低速強圧おろし・・・☆☆☆☆☆
高速強圧おろし・・・★☆☆☆☆
高速強圧おろしにかすかに辛味が感じられる程度で、基本的に甘い大根おろしになっていた。
やはりおろし方によって差が出るのは確かである。
辛くない大根おろしはゆっくりというより圧力を少なく、結果的にはゆっくり(時間がかかる)ということか。
そしておろしてからの時間によっても差が出る。
逆に辛味を旨みとするならば、食する直前におろすのが正解のようだ。
すべての大根おろしは、その後スタッフがおろしポン酢から揚げにておんちくいただきました。
(2018.5.21)