折々のお料理
飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究 |
みそ汁缶
何故、今までなかったのだろう?
いや、昔の人はもちろん考えたことはあるに違いない。
今までなかったのは、例えば味噌の風味を生かせないとか、長期保存で味が変化してしまうとかのような製造管理上の都合があったのかもしれない。
もしかしたら自分が知らなかっただけで、味噌汁缶はすで存在した可能性もある。
と、検索すると実は結構出てくる。
過去にいくつかの商品があり今でも売られているようだが、見かけないところをみるとあまりヒットしなかったようだ。
防災用として保存食の缶もあった。
災害時にこそ馴染みの深いみそ汁の味がありがたいのだろう。
まあ、いつでも作ることが出来るみそ汁を、わざわざ自販機で買うという発想がないのかもしれない。
日本という国は自販機王国。
街を歩けばそこかしこ、住宅街でも山の中でも、こんなところにどうやって電気が来ているのだろうかという所にまで自販機がある。
そしてもっと驚くべきことはそれらの機械はほとんど荒らされておらず、きちんと稼動する。
思い起こせば過去に、色々な缶飲料がでて話題になった。
アルカリイオン飲料とはどんなものなのかものすごく興味があった。
その後いわゆるスポーツドリンクとして市民権を得た。
緑茶やウーロン茶が出たときも、駅弁ついででもないのに茶なんぞわざわざ買うやついるのか?と思ったがこれもまた定着した。
水道水の劣化も大いに影響したのだろう。
缶のしるこやコーンポタージュも今や冬の自販機の定番品でもある。
はちみつレモンや○○の天然水は意外とあっさりなくなった。
メロー○エローとかマウン○ンデューとかなつかしいなぁ・・・。
少し前にはおでん缶やラーメン缶なども話題になった。
世にも珍しい(当時)ラーメンの缶詰。
めんがこんにゃくなので正確にはちょっと違うような気がするが、なかなか努力している感がある。
味もなかなか美味い。
他の食品の缶詰があることを考えれば、これらはそう珍しくもないのかもしれない。
とはいえ自販機で暖められていて、すぐに食べられるということでは珍しいかも。
そういえば自販機で売られているものの中で、しょっぱいものといえばトマトジュースとコーンポタージュくらいだ。
じつはこのみそ汁缶、あるコンサートホールのロビーの自販機で見かけ、早速飲んでみた。
少々薄味だがなかなか美味かったのでもう一度買おうと探したが、街の自販機にはなかなか見当たらない。
その後見つけた場所は、とあるスポーツセンターなどの公共施設のロビー、駅の弁当売り場だった。
共通するのはそこで弁当などを広げて食事をする可能性のある場所だった。
原材料は「米みそ、なめこ、鰹だし、わかめ、ねぎ、食塩、調味料(アミノ酸等:乳糖を含む)、安定剤(セルロース)、香料、乳化材」
普通みそ汁を作る時には入れないものが入っている。
というわけでここは新幹線の中。
ぱかんと開けてみた。
げげ白いっ!
そうでしたそうでした。
全国的には味噌汁の色はこんな色だったのだ。
近年はもっぱら名古屋仕様の赤だしに馴れすぎていたので最初この色は少々驚いた。
新幹線の駅の売店でみそ汁缶を買うとこのような容器もくれる。
日ごろ我が家の食卓にのぼる赤だしみそ汁。
確かに色が全然違う。
名古屋人にはこの方が馴染みが深い。
わざわざこの為に容器を持ち帰って再現してみました。
「塩分控えめ」となっているが個人的にはもう少し濃いほうがいい。
わざわざ自販機で買うということは、塩を欲しているわけで、そんなに量も多くないのだからもっと濃くてもいいと思った。
具はなんと国産なめことわかめとねぎという、みそ汁の鉄板のような組み合わせ。
具は缶の中に入れるので小さいのは仕方がない。
わかめはすぐにわかったがねぎの姿が見えない。
小さななめこが泣かせる。
実は小さななめこの選別作業に手間がかかっていたりして。
食ってまったので一つしか写っていませんが7〜8個入ってました。
そしてなめこが沈んでいる。
缶で飲むと最後のほうまでなめこの存在がわからない。
そういえば缶のイラストのように、家で作った味噌汁のなめこは浮いているのに何故沈む?
傘の裏側に空気を含むからか?
あれっ?
さっきまで浮いていたなめこがない。
家で作ったみそ汁のなめこも時間がたつと沈むようだ。
このみそ汁缶、ネット上でその評判を調べてみると、残念ながらあまりよろしくないようだ。
日本人なら誰もが日ごろ食しているものだけにその評価は厳しく、わざわざ缶に入った不利な条件のみそ汁を同列に語るには難しいとみえる。
しかし、このみそ汁缶の真髄はその手軽さにある。
ふと街を歩いていて、急にみそ汁が欲しくなることってない?
そんな時に便利な、いつでもどこでも自販機で買えるこのみそ汁缶。
街の中ならコンビニや定食屋に入ればいいのか。
周りに何もない真っ暗な山道を車で走行中、ふとみそ汁が欲しくなることってない?
そんな時、闇に浮かぶ自販機の明かりの前で車を止め、ガコンと一本。
車通りのない真っ暗な山道で、満天の星の寒空の元、あったかいみそ汁をすする。
結構いいかもしれない・・・。
普通コーヒーでやるもんだろ。
みそ汁缶。
それは、現時点では手放しにブラボーというわけにはいかないが、多大なる可能性を感じさせる一本だ。
是非たくさん買って、売れればさらに改良され、バリエーションが増える。
とうほぐ仕様、西日本仕様、けんちん汁やとん汁、名古屋赤だし仕様など出て欲しいものだ。