折々のお料理

飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究

生せんべいを焼いてみる


生せんべいとう和菓子があります。



どうも愛知県の半田市のとあるメーカーの物らしいが、全国区かと思ったらローカルな食べ物だった。
古くは家康の時代までさかのぼるほど歴史あるものらしい。
なんでも、名古屋のういろうや京都の生八橋の起源でもあるという。



シンプルで飾り気のない味わいは、意味もなく無性に恋しくなることがある。
ごくたまに売られているのを気が向いたら買っていたのだが、買おうと決めてから探すとなぜか見つからない。
確かにそこかしこに売っている物でもない。




それもそのはず、調べてみたら売られているところがかなり限られていた。
以前近所のスーパーで見かけたことがあったが、いつも売っている訳ではなくごくたまに限定販売されているらしい。




今回は偶然にも「徳用切れ端」まで売られていたのでゴット(ゲットの過去形)!

 

原材料は米・黒砂糖・上白糖・蜂蜜・食塩・小麦粉。
食品添加物は一切使用していないという。




べろーんと柔らかく、要は甘い餅のような物、ういろうや八橋の原型というのもうなずける。

かつて薄いフィルム包まれただけの包装だったが、今のご時世柄その上からさらに密閉されている。
 



3枚入りというから黒白黒の3枚かと思ったら、薄手の餅の3枚重ねになっている。
かといってしっかり癒着しているので3枚に剥すのは困難、3枚重ねにすることによって空気を含み、普通の餅とは違った独特の柔らかな食感にする為だとか。

 
確かに3枚だ。切れ端を見るとよく判る。

もちもちとした食感と黒砂糖の効いた甘味は、一度食べると忘れられないほどインパクトがある。



ところで、せんべいというからには、これを焼けば当然、いわゆるあのせんべいになるということですね。



せんべいの作り方を調べてみると、

コシヒカリの米を

粉にして

蒸して

搗いて
(今ここ?)

薄く延ばして

型抜きして

乾燥させて

焼く

基本的には餅と同じようだが、「もち米を米のまま蒸して臼で搗いた」餅よりも多少手が込んでいる気がする。
とは言え一口にせんべいといっても製法は色々あろう。
せんべい生地をものすごく大まかに「餅を薄く延ばして乾燥させたもの」という解釈でよしとしましょう。





焼いてみるか。



まずは生せんべいを薄く延ばします。

げ、ひっついた。



延びません。


延ばしても延ばしてもにむ〜んと縮んで薄くならない。

仕方がない、剥いで薄くしますか・・・。


切ってみます。
 
切ったはずなのに、気がつくとお友達になっている。




ちょっとつまみ食い。



引っぺがしたり切ったり丸めたり、とりあえず色々試してみました。

ざるに乗せて乾燥させましょう。





ひっついてもうた・・・。





数日後・・・


まだ微妙に水分を含んでいる。

生せんべいには普通の餅と違い細かな気泡を含んでいるので、なかなか固くならない。



乾燥させること一週間

表面は乾いてべたつかなくなり多少固くなったものの、あまり大きな変化がない。
一説によるとせんべい生地はカピカピになるほど硬く乾燥させてあるらしいが、これ以上乾燥させてもブリ太郎の夜食になってしまうだけなので食ってしまうことにしました。


とりあえず焼かずにそのまま食ってみました。

ものすごい弾力。
水分はだいぶ抜けてみずみずしさがなくなった代わりに弾力が増していた。
ハイ○ュウの食感とそっくりだ。


正直、固いだけであまり美味ではない。
味は変わらないのだが、食感だけでずいぶん印象が違う。




五徳二段重ねで焼きました。


焼くと一時的に柔らかさが戻る。



焦げた。



砂糖を多く含むので、少しでも気を抜くと見事に焦げてしまう。
餅のように香ばしく焦げるというよりも、砂糖が焦げて苦味が増した香り。


しかし妙な光景。
これは焼肉か?



焼きあがりました(右の皿)。
正確には表面が焦げただけでまだ柔らかさが残っています。

それにしても、食べ物を粗末にしているようなこの罪悪感は何だ?

食ってみましたが正直、不美味です。

いわゆるせんべいのようなぱりぱりとした歯ごたえではなく、固くてパサパサした中にも柔らかさが残る奇妙な食い物が出来上がりました。
甘いのだがそれを上回る苦味が尚一層の不美味さを引き出す。

 
もはや餅の食感ですらない。

失敗。


今度は気をつけて焦がさないように時間をかけて焼いてみました。


干ししいたけのような状態になってしまいました。


やはり苦味の強いパサパサのキャラメルのような食感。
市販のせんべいのように香ばしくはいかなかった。
どうも多量に含まれる砂糖がそうさせるのか・・・。
しかし京都の焼き八橋は充分な甘味を持ったまま固く焼けている。

どうやらこの方法、せんべいというものの作り方を根本から間違えていると思われます。

とはいえ、生せんべいはそのままかぶりつくのが最も美味ということが判明しただけでも収穫だった。
一週間放置しても食えるということもわかりました。


ここに記載されているような間違った保存法や不適切な改造を行うと、
メーカーによる保証が受けられなくなるばかりか、

あなたの健康を損なう恐れがありますのでご注意ください。


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