折々のお料理

飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究

回らないお寿司を食べ比べる


今や庶民のお寿司といえば、レーンの上で回っている回転寿司が一般的だ。
色とりどりの寿司が次から次へと流れてくる様子は圧巻で狩猟本能を掻き立て、見ているだけでも楽しい。

一人でぶらっと行ってカウンターで気ままにつまむもよし、日本の伝統食は今もしっかりと現代に息づいている。

スーパーの惣菜コーナーにも寿司は必ずあり、おにぎりのようにいつでも気軽に手にすることが可能だ。
それでも寿司はちょっとだけ高級なおめでたいご馳走、誰もが感じる特別感がある。


そんな中、昔からあるカウンターのお寿司屋さんは気軽に入るにはちょっと気合が要る。
庶民的な値段のお店ならばよいが、ものすごい高級店もありうる。

メニューがあればわかりやすいが、外から見ただけではなかなか判別しづらい。

しかし昔からいままで存在し続けているということは、それなりにお客さんは入り、繁盛しているということか。




と、言うことは・・・

美味!?





名古屋市内のとある場所には、非常に近い場所に二件の寿司屋がある。
道をはさんではいるものの、ほぼ隣り合っているといってもいい。

そこは人通りの多い繁華街であり、飲食店激戦区でもある。
調べてみるとどちらも創業から50年以上続いている老舗とのことである。


実はそのうちの一店は、私しぶーのも何度か足を運んだことがあるなじみの店。

その店は美味い。
ネタや酢飯、海苔やワサビ握り方巻き方にいたるまでこだわりが生きている、さすが回らないお寿司である。

量から換算すると回転寿司のおよそ倍の値段程度。
しかしその美味さゆえに高いとも思わず、不思議とまた行きたくなる魅力的なお店だ。

きちんとしたすし屋にしては庶民的な値段なので、外国人観光客にも人気らしい。



そんな店のすぐ近く、徒歩で数歩の距離に別の寿司屋があるのだ。
こんな距離の場所で成り立っているということは美味いのか?

ぜひその2つの店舗を比べてみたい。
まあ別々に行けばいいのだが、2つ並べて比較したらどう違うのだろう?
そんな疑問が湧いてしまった。

と、いうわけでその接近する2つのお店のお寿司を持ち帰り、2つ並べて検証しよう!
という極悪プロジェクト




馴染みのないもうひとつの寿司屋は高級料亭などによくある曇りガラスのガラガラ引き戸で中が見えない。
その風格ある入口からはいちげんさんお断りの空気が漂っている。

いやいや、今日は意を決して突入の日、それでも安心できるのは外に見本とメニューが書いてある。



勇気を出して引き戸を開ける。

「いらしゃいませー」明るく威勢のいい声。
カウンターにいなせな職人(名古屋なのでなんと言うのだろう?)が3人、着物を着たお運びさんが2人、狭い間口のわりに奥が深い、意外と規模が大きな店だった。


席に案内され熱々の茶をすすりながら座って待つことおよそ10分。


こうしてしぶーの史上初の二件の寿司屋をはしごして二つの折り詰めをゴット。


一番安いやつ。値段はほぼ同じだった。




手に下げられた2つの寿司折、しかしその寿司を持ち帰る時がまたやばかった

電車内で動いたりして揺れる度にほのかに立ちのぼる酢飯と海苔の香り

これがまたスーパーやその辺の回転寿司にあるような「いわゆる普通の寿司」的な香りとは全く違う。
全力で美味美味(ウマウマ)電波が出ている。

これはヤバイ!
こいつら本気(マジ)だ!





回転寿司が巷で広がったのには理由があるという。
低価格で気軽にという庶民の要望にマッチしているということもさることながら、昔からあるクラシックスタイルのお寿司屋さんが高級すぎて敬遠されているのも大きい。

しかもその料金に見合った味ならば納得が行くが、一度でも期待はずれなお店にあたると二度とお寿司屋さんに行かなくなってしまう。

 


さらに会計が不明瞭というウワサも絶えない。
ネタはすべて時価であり、お客さんの身なりを見て適当に請求するというウワサ。


もちろん今はそんなお店はまずないといってもいいと思う。
しかし過去に一度でもそんなお店があったのならば、その被害は都市伝説となって駆け巡ってしまう。

食い物のウラミは恐ろしいのだ。


突然ですがここで、

しぶーのの好きな寿司ベスト3

激しくどーでもいいが・・・

第3位 赤身マグロ握り

定番中の定番。マグロはトロよりも脂の少ない赤身が好き。黒マグロでなくキハダでもいい。
どのくらい新鮮なネタが仕入れられいて、切り方握り方などの基本が判る。
これが美味ければその店は何でも美味い。

第2位 たまご握り

だしの味、砂糖やみりんの利かせ方などそのお店の料理の味付けがわかる。
きめ細かく卵を巻くのか、荒く巻いてだしが染み出るのを楽しむか。ご飯の握り具合もわかる。
ほんの少しアクセントに添えられた海苔の質もわかる。

第1位 かっぱ巻き

なんともお子様味な!というなかれ。
細巻き寿司にワサビだけのワサビ巻きというものがある。
シンプルだが酢飯や海苔やワサビの味からつけるしょうゆにいたるまでしっかりしていないと成り立たない。
ほんのりと温かい酢飯に香りのよい海苔、固すぎず柔らかすぎない巻き加減に冷たいきゅうりのコリコリとした歯ごたえ、
そしてワサビの強烈な辛さが突き抜ければ、これぞ最強の寿司となる。


しぶーのの好きな寿司ネタは実に安上がりだ。
安上がりだからこそ安心して頼むことが出来るのだが、だからこそどんな寿司にも手を抜かない店の姿勢が現れる。


さて、寿司店Aのもの。
幾度と足を運んだお店なので味もわかっている。

いつものように美味だ。
持ち帰り容器は木で出来ているので木のほのかな香りがして、お店でいただくのとまた違った味で楽しめる。




ここから未知の領域。

この寿司店Bのものは果たしてどうなのか?

びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛!!

マスオさんかよ!



この二つの店の味に違いはあったのか?

すでにしょうゆから全然違う。
ほんのりと味がついている、これは昆布しょうゆというやつだ。


酢の違いか、両店のご飯の色には若干の違いもある。


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持ち帰りなので当然味は落ちているはずであるがそんなことはどうでもいい。

スーパーで売られている寿司とも違い、ほんのりと暖かいご飯に煽られてネタや海苔の香りが広がる。
何であろうか?この満足感と幸福感は。

もちろん夫婦二人で小さな寿司折2つという量では到底足りない。
しかし何ともいえぬ美味な記憶がいつまでも口の中に残る。



ああ、本当に美味い

あそこの回転寿司がネタがよくて美味いとか、一気に吹っ飛ぶ説得力がある。
分析のためにあえて酢飯がとか海苔がワサビがと言っているが、実際には口の中に広がるのはそれらがすべて合わさった味。
美味という以外になかなかいい喩えがない。
バランスが見事だ。



この勝負


引き分け!



回転寿司は気軽に行ける、ガッツリ量が食べたい、家族連れや仲間内でわいわいと楽しみたいなど、目的が違う。




しかし、たまには回らないお寿司もいいものだ。

回転寿司に2回行くのを我慢してでも寿司屋に行く価値はある。




こんなことを書くと全国すし組合からすし券が贈られて・・・

来るわけねえだろ!


(2016.1.26)


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