折々のお料理
飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究 |
ういろう、ういろ、ういらう
仕事で小田原に行った時のこと。
何かよい土産はないかと特産品を物色していると、あるものが目に入った。
小田原といえば、かまぼこをはじめとする魚肉加工品が有名。
釣りの錘に小田原型というのがあるが、鉾のような形になっている。
蒲鉾からきた洒落ではなかろうか?まさかなあ・・・
(あと提灯にも有名な小田原型というのがある。)
ういろう?
ういろうといえば、きしめん味噌カツと並ぶ尾張名古屋の名産品じゃにゃあか?
いや、知らないわけではない。
ういろうといえば小田原、昔の記憶では小さな粒の丸薬のようなものだった気がするが・・・。
調べてみるとどちらも正しかった。
ういろう=外郎
江戸時代、仁丹のような大衆薬を製造していた小田原の外郎家の来客用菓子として伝えられていたものが、明治以降に薬と共に販売されるようになったことで全国に広まったと考えられている。
ういろうは1931年に名古屋駅でホームでういろうの立ち売りを始め、1964年に東海道新幹線が開通後はういろうだけが新幹線での車内販売が許された(何故だ?)ことからういろうは有名になったとされる。
つまりういろうとは名古屋にあるあれの他に全然違う何かがあるという程度の認識でいたのであるが、お菓子丸薬共に元々は小田原が元祖ということだ。
今現在お菓子としてのういろうは名古屋、小田原の他に山口市、伊勢市、岐阜県、京都市、徳島県、中津市、神戸市、宮崎市などの名物となっているらしい。
しかしながらういろうやすあまのような米を原料にした蒸し菓子は全国どこにでもあり、そのルーツをはっきりさせることは極めて困難でもある。
もはやどこが最初に商品化したか、特産品として広めたか、知名度があるか、原型があるのかなどが争点となってくる。
まあどこだっていいのだけれども。
小田原産ういろうと名古屋産ういろう。
(正確にはういらうとういろ)
小田原産には「お菓子の」と書かれている。
あっ!
こらこらこらーーーー!!
ケンカすんなよ・・・。
名古屋でういろうといえばこの大須ういろと並ぶ有名なのがもう一つある。
助っ人を呼んできた。
またまた名古屋では誰もが知る青○柳ういろう。
あっ!
やめんかーーーー!!
名古屋の名物といえば何だ?
と問われれば、このういろうは上位にランクインされる。
恐らく1位はきしめん。
帰りの新幹線のホームで食することが出来るというのも大きな魅力だが、味といえばうどんのようなもの、全国どの人にも理解がなされるグローバルな味付けであり、他の味噌カツやどて煮や小倉トースト等のディープな名物のように、強烈な拒絶反応がない。
同じようにういろうは誰でも食すことが出来る安全なお土産として知れ渡っている。
しかも出典はどこなのか記憶が定かではないが(たしか本で読んだ)、もらってうれしくないお土産ナンバーワン(ワーストワン)に輝いてしまったのがこの名古屋のういろうなのだそうだ。
理由は重いから。
しかし名古屋人にとってこのういろうは人気のお土産上位にランクインする。
理由は重いから。
名古屋の人々にとってお土産が重いというのは大量の象徴であり、喜ばれるものなのだ。
(唯一例外として軽くても喜ばれるのは坂○角のゆかりという海老せんべい。)
極めて合理的にパッケージされた現代のういろう達。
げげっ!
何だお前は!?
箱の中にはうやうやしく緩衝材と取扱いマニュアル、そして本体には未来を感じさせるアルミパックがなされている。
皇室を表す五七桐や菊花紋までが描かれている。
しかもマジックカット!
まあよい、食い物である以上一番重要なのは味であるからな。
早速いただいてしまいましょう!
っつうか、マジックカットは意味があるのか?
後で気がついたが、箱の内側に正しい剥き方が明記されていた。
そもそも名古屋のういろうのように、横からスライドさせる出し方からすでに間違っていたのだ。
ういろう三体。
左から名古屋ういろうA(仮名)名古屋ういろうB(仮名)小田原ういろう(仮名)
これはどうしたことか、ずいぶんと色が違うぞ。
今回比べるのは色々な味がある中で最もシンプルな白。
いわゆる米粉のみのベースとなる基本的なものだ。
それでいてこれだけ色が違うのはかなり違いがあるのでは?
じつは大きな違いとして硬さが全然違います。
名古屋のういろうはどちらもプニプニと柔らかく、プリンやゼリーのような弾力と餅のような粘りがあります。
比べて小田原のういろうは弾力はほとんどなく硬くぎゅっと締まっている。
原料の米粉の分量や濃度が違うのか?
硬さが違うので当然食感の違いが大きい。
さて、肝心の味は違うのか?
香料も使われていないので米の味と砂糖の味のみである。
色や硬さ弾力に違いはあれど・・・
味に関しては大して違いはない。
砂糖や米が貴重な時代ならともかく、
うーん、正直飽きる。
ういろうのルーツとも言われる生せんべいに登場していただきました。
生せんべいは米の粉を蒸して造ります。
あ、これは全然違うわ。
生せんべいは米粉を蒸した後、砂糖と蜂蜜を加えて更にこねて作るので中に気泡が含まれていて独特の柔らかさと弾力がある。
甘みもういろうよりも強く、食感もどちらかというと餅に近い。
これは明らかにういろうとは別物。
あっ!
おまえらケンカすんなーーーー!!
さて、普段は滅多に口にすることのないういろうが一気に3本も封を切った状態で冷蔵庫に入っている。
賞味期限はどれも数日程度(未開封で)と意外と短い。
一体これだけのういろうをたった数日でどう消費しろというのか?
特に香りもなく甘さも控えめでこれといって美味くない(言っちゃった・・・)が、時間を空けると何故かまた欲しくなる不思議。
結局そんな心配をよそに、数日でみんな食ってしまった。
切り口をラップで密閉すれば結構持つ。