折々のお料理
飽くなき食欲が生んだ料理や食の研究 |
焼そば
夏と言えば、焼そば。
あのソースの焦げるかほりは、冬の寒さよりも夏の太陽がよく似合う。
真夏の太陽照りつける浜辺の海の家で、祭りの夜店で、キャンプでバーベキューと平行して・・・。
どちらかと言うと家庭料理というよりもイベント食と言ったほうが似合っているかもしれない。
そんな焼そばを家庭で気軽に作ってしまおうという魂胆なのだが、何を今さら勿体つけて、わざわざ身構えるほどの難しい料理でもなかろう、と思われがちだが、実は結構難しい料理でもある。
焼そば失敗例
フライパンに焦げ付いてしまった。
麺がブチブチに短く切れてしまった。
具の野菜が多すぎて味が薄まってしまった。
具の火の通りと麺の火の通りにムラが出来てしまった。
やたらと油っぽくなってしまった。
水っぽくべしゃべしゃになってしまった。
この中のどれか一つは該当するのではないだろうか?
つまり、「焼きそばとはこのようなもの」と思ってはいないだろうか?
さて、焼そばはスーパーの麺売り場にあるのだが、大抵が蒸した麺に粉末なり液体濃縮のソースが付属しているものがポピュラー。
この付属のソースがついていれば、とりあえず味付けは安心だ。
しかし世の中には、このソースが付属していない麺が売られている。
この場合、別途ソースを用意しなければならない。
ソースの売り場を見ると、焼そば用のソースが売られている。
やはり焼きそばには焼きそば専用のソースが必要なのか?
住まいの洗剤で、食器用、お風呂用、洗濯用と分かれているが実は濃度や配合分量が少し違うだけで実は中身はほとんど同じということもある。
こうしておけば、それぞれ個別に売れると言うわけですね。
本来はソースと言えばタレ全般というような意味があるが、その重要なポストに醤油が陣取っていた日本の食卓において、ソースと言えば外来のウスターソースとして定着している。
中部地方では知らぬ人などいない有名なあのソース。
しかも値段が高い※ことでも有名。
ウスター(こいくち)、中濃、とんかつの三種類が一般的。
※「値段は高いが、いい味です」がキャッチコピーだった。
ウスターソースと言えばなんとなくこの種類のソースの中で薄いものという気がするが、正しくはこのソースの発祥の地、イギリスのウスターシャー州という地名をさす。
(当時のウスターソースは現在日本で出回っているものとは微妙に違うらしいのだが。)
関東地方では有名な犬印(仮名)中濃ソース。
ウスターソースしか知らなかった幼少の頃、衝撃的だった。
一説によると、熟成タンクの上澄みがウスターソース、下に溜まった濃い部分がとんかつ用、その間が中濃とも言われる。
とんかつ用は野菜や果物の成分が沈殿しているので甘みがあり、全体的に味が濃いのが特徴だとか。
元々はそのような分類だったが、安定して供給しなければならない現在、一つのタンクを分離しているとは考えにくく、そのようなコンセプトで別々に作られるのが正解ではなかろうか。
(食品分類的にはそれぞれ粘度が定められているそうです。)
で、「焼そば」と「こいくち」では何が違うの?
左は「焼きそば」、右は「こいくち」。
原材料を比べても大きく違いがある。
分類はどちらもウスターソースだが、こいくちは野菜類が筆頭で焼そば用は糖類が筆頭になっている。
セ、セルリー?オランダミツバのことですかい?
栄養表示は一回に使用する分量を目安に表示されているのでややこしいが、エネルギーはこいくちがやや上回る。
トマトが入っているからだろうか?
しかし食塩量では焼そば用が上回る。
調味用として味が濃くなっているのだろうか?
色を比べてみた。
正直、違いは判らない。
舐めて味を比べてみたが、
げっ!酸いい!
げほごほ!
むせるむせる。
ソース単体ではかなり味が濃い。
同量の水(大さじ4杯)で薄めてみた。
心なしか焼きそばソースのほうが濃い気がする。
焼色をつけるためにカラメル色素が多いと見た。
飲んでみた。
ああ、ソースだ。
焼そばソースは・・・塩味がきつい、味が濃い
こいくちは・・・すっぱい。
確かに違いはある。
つまり焼そばソースを薄めてもこいくちソースにはならない。
この二つは別物である。
なるほど、普通のソースと焼きそば用のソースの違いは判った。
とは言えこれはこのメーカーならではの違いであって、実際には大して違わないと言ってもいいほどである。
黙って入れ替えられたら、まず判らない自信がある。
もしウスターソースが既に家にある場合、それで焼きそばを作ってもなんら問題ない。
(あ〜あ、言ってしまった。)
ただし、鉄板で焼く料理には甘みの強いソースは適さない。
とんかつソースやお好み焼きソースのように糖分が多いソースは、焦げて苦味が出てしまうからである。
鉄板で焼く料理は、ソースの良し悪しが非常によく現れるので、ぜひとも質のよいソースで作ることをお勧めする。
焼そばを美味(上手)く作るには、まず鉄板。
この鉄板が温度を保ち材料の火の通りを左右する。
鉄板の厚みと保温能力、火加減、温度を見極める勘、そして材料を入れるタイミング、これらが焼きそばの味に影響する。
よく出来た焼そばは、先に挙げた失敗例のどれにも該当しない。
しぶーのは学生時代より卒業してしばらく、およそ10年間お好み焼き屋でバイトしていたことがある。
と、究極の焼きそばを求めるならばの話であるが、家庭ではコンロの火力に限界もあり、フライパンや北京鍋で代用することになる。
具材には豚肉、キャベツ、もやし、にんじん、ニラでも入れましょうか。
実はこの焼そば、おかずとして野菜炒めも兼ねているので、やたら野菜がたくさんです。
鍋に少量の油を入れて、キャベツとにんじんを投入。
軽く火が通るまで炒めます。
野菜は焦げ付く心配がないので手早くかき混ぜながら強火で炒めます。
キャベツは端が少し焦げているくらいが香ばしくて美味い。
軽く火が通り、だいぶ少なくなりました。
中火にして、ここで豚肉を入れます。
えっ!?
野菜をまぶすようにかき混ぜて肉に火を通してゆきます。
判っております。
あえてこのタイミングで入れております。
肉は本来ならば一番最初に入れて火を通すべきなのですが、その場合には焦げ付きを防ぐために大量の油が必要になります。
カロリーを減らすため、少々肉の香ばしさが犠牲になっても油を減らしました。
肉に火が通ったら弱火にして、上に四角いままの麺を載せ、少量の水をかけます。
水をかけるのは鍋の温度を下げるのと、蒸気で麺を蒸してほぐれやすくします。
このタイミングでソースを投入します。
粉末ソースや液体ソースならば、薄める必要があるので少量の水を加えますが、液体のウスターソースの場合はソースの蒸気で麺が蒸れるので水を加える必要はない。
ここで無理やり麺をほぐすとぶちぶちに切れた焼そばになってしまう。
大きな音がして湯気が出て、待つこと数十秒、秘技クロス切りを使って箸で麺をほぐす。
秘技クロス切りとは・・・・麺類(特にインスタント麺)の料理に有効なほぐし技法。箸を両手に一本ずつ持ち、箸をクロスした状態で麺に挿し左右に開くように開いてほぐしてゆく技法。素早く繰り返すことにより効率よく、麺の損傷を最小限に抑えてほぐすことが出来る。
麺がほぐれたら、もやしとニラを投入。
この二つは余熱で火が通るくらいがちょうどいい。
今の火力は弱火。
ここから先、ソースと麺を焦がさないためにも、火力には極力注意!
店では、ソースを入れた後は一刻一秒を争う早業で仕上げなければ台無しになってしまうが、このやり方だと幾分ゆっくりとできるので失敗が少ない。
弱火のまま、箸で底のほうからかき回し、全体にソースをまぶすようにかき混ぜてゆく。
生だったもやしとニラは徐々に火が通ってゆく。
味見をしてソースが足りないようならば足してゆく。
意外とたくさん要る。
ここで大事な隠し味を投入。
ソースの辛味だけでは物足りないという方のために、タバスコ。
この酸いさは実によく合う。
そしてカレー粉を一振り。
スパイシーさが格段に増す。
わからない程度に一振り足すもよし、たくさん足せばカレー焼きそばになる。
さらに醤油をほんの数滴入れると独特のコクが出て美味。
と得意気に書いてみたが、先ほど出てきた焼そばソースの原料に思いっきり入っておりました。
ここから先は底のほうからかき回すように大胆に混ぜ、水気を飛ばしてゆく。
くれぐれも弱火〜中火くらいで焦がさないように気をつけます。
麺をかき混ぜるのは箸が適している。
実は業務用のヘラ(テコ)で麺を混ぜた場合、麺を出来るだけ傷つけないようにするのが非常に難しい。
麺の表面が傷つくと、味や食感にムラが出て不味く感じてしまう。
最後に、残った水分を飛ばしソースを焦がして香ばしくするための焼付け作業。
手早くかき混ぜながら火力を上げ、パチパチと音がして少し焦げついたらすぐに火を止めて完成。
山のようにありますが、実はほとんど野菜です。
二人前に油は小さじ1以下、極力使っておりません。
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