幻の「日暮し乃瀧」 in 夏
岐阜県土岐市の山中にひっそりとある日暮し乃瀧。
過去に訪れようと探し回ったがなかなか見つからず、数年越しで情報を得て念願の滝見を果たした。
参考過去記事
滝まで訪れたのは真冬。
晴天の続く乾ききった山。
累々たる枯れ枝の数々。
もしかしてここ、夏には劇藪になるのでは?
もしかしてここ、夏には劇藪になるのでは?
大切なことなので2回言いました。
言っておいてそのままかい。
と言うわけで、再び参りました、真夏です。
このクソ暑いのに長袖長ズボンなのは虫対策と藪漕ぎのための防備。
時は2021年。
世間は新型コロナウイルス蔓延でパニック状態、本当は去年(2020年)に訪れる予定だったが延期した。
ようやく二年越しに叶う訪問、この後近くのバーパソ※でひと汗流して帰りたいところだがそれも自粛。
※バーデンパーク曽木・・・この近くにある温泉施設。プールやジムもある。
林道入り口から見ると、夏には緑の濃さが際立つ。
もさもさと茂る草で登り口の階段は全く見えない。
ここをかき分けて林の中へ入ってゆく。
同場所の冬の様子。
真夏の山は笹が生い茂っているぶんだけ歩きにくい。
(右は比較のための冬の様子。)
茂みは林の中に入ってしまえば光を遮るのでそれほどでもなくなるが、それでも冬よりも伸びている。
実はここ、足を滑らせると大変なことになるほど結構な高さがある。
前日までの雨の影響で地面がぬかるんでいてなかなか怖い。
笹をかき分けながらアップダウンをしばらくゆくと、目印の祠に出る。
ここの裏からは下の沢まで道なき道を進まねばならない。
上空の木々が茂る分、冬よりも薄暗い。
訪れたこの日、時刻は昼過ぎだったが、山間の夕方は暗くなるのが早い。
鬱蒼とした林の中、ヒグラシの声がケケケケと響き渡る。
おお、本当の日暮し乃瀧だ。
なんとか沢まで降りてきました。
微妙に水が多い。
この時期、山間部は時々夕立に見舞われるので、川の水位には注意が必要だ。
滝のある支流からは、冬の前回に比べ多くの水が流れ込んでいる。
地質が違うのだろうか、沢の水は澄んでいるが滝のある支流の水は白濁している。
昼間でも薄暗い沢は湿気が多く、岩が濡れていたり苔が生えていて滑りやすい。
(実はこの沢を渡るのに2回ほど足を滑らせて水に落ちた。くるぶしまでの水位なので大事には至らなかったが。)
冬には枯れ枝だった所に、屋根のように葉が覆い尽くす。
しかしこんな所まで不法投棄のタイヤがありやがる。
足場が悪いのでかなり慎重に進む。
幸い低い位置にある枝には多くの葉が茂っていないので、行く手を阻まれることは少ない。
真ん中に水が流れているというだけでずいぶん登山ルートは限られる。
右岸をゆくか左岸をゆくかの選択、そして中央付近以外の石は意外と安定しておらず、足を乗せるとぐらぐらと揺れる。
川はたいした水量ではないが、この白濁した水に足を没するのはちょっと躊躇する。
藪に関しては正直思ったほど進みにくくはない。
ただ、上空の木々の葉で薄暗く、湿った岩が滑るので足下が危うい。
前回の冬には歩けたところが歩けなくなっている。
一抱えもある大きさの岩がゴロゴロするこの沢は、現在進行形で形が変わりつつある。
そんなガレ場をしばらく登ってゆくと、ようやく目的の滝が見えてくる。
ちょっと気軽に見に行く訳にはいかない幻の滝。
高さは3メートルほどだろうか、辿り着く苦労と滝の雄姿のバランスは微妙である。
本格的な沢登りをする滝ハンターには笑われてしまうかもしれないが、普段遊歩道しか歩かない人にはなかなかハードだ。
滝のある谷底から空を見上げる。
すっかり薄暗い森だ。
写真もブレブレ。
下界では猛暑の夏、日はまだ高い。
しかしここ山間の谷間ではすでに日は傾き、ヒグラシの声が響き渡る。
あまり長居をしてはいけない空気を感じる。
さあ帰るとするか、と来た方向を振り返る。
再び薄暗い森と劇藪が待ち構える。
こんな沢を慎重に下ってゆく。
(2021.8.11)