現存するナローゲージ〜三岐鉄道北勢線


日ごろ見かける電車の線路の幅は、狭軌とよばれるものらしい。

いわゆるよく見かける線路は、レールとレールの間が1067mmでJR各社在来線など最も多く見かける。

あれで狭いというのならば広いのは何なのだ?
線路の広さが色々あることなど気にしたこともない人は多いと思うが、世界標準は1435mm(4フィート8.5インチ)なのだそうです。

この標準軌は日本でも新幹線や一部の私鉄などで採用されている。

  

新幹線、名古屋市営団地下鉄東山線、近鉄線。
確かに広い。




とりあえず軌道には普通の広いのがある、程度には知識があった。



調べてみると現在日本では、4種類の軌道幅が使われているらしい。

1435mm・・・・新幹線、近鉄線、名古屋営団地下鉄の一部など。全世界の6割が採用している。
1372mm・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・井の頭線を除く京王電鉄各線・都営地下鉄新宿線等。
1067mm・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・JR在来線、日本ではほぼ標準で最も多い。
762mm・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ナローゲージとよばれる特殊狭軌。


新幹線や近鉄や地下鉄の軌道幅が広いのは気がついていたが、1435mmと1372mmの差は僅かで、おそらく見ても判らないレベルだと思う。
線路の幅や車輌の大きさやホームの高さが違うので車輌の共有ができないということか。



しかし気になるのは一番下のナローゲージ



762mmっちゃあ、靴の3足分もありませんぜ!
遊園地にあるお猿の電車じゃあるまいし、まともに乗客を乗せて営業運転が出来るのだろうか?


かつて日本には軽便鉄道という規格があり、林業が盛んだった時代には森林鉄道や工事用のトロッコ軌道として多く引かれていた。
しかし、建設や維持コストが押さえられる反面、最高速度や輸送力が不足しやがて衰退していったという歴史がある。

今現在、純粋に旅客用として現存するのは三岐鉄道北勢線と近鉄内部・八王子線(きんてつうつべ・はちおうじせん)の二箇所のみである。  




つまり難しい事はともかくとして、とっても珍しいのであった。






三重県は桑名市。

名古屋から関西方面へすぐ、三重県の中では最も愛知県に近い街。
「その手は桑名の焼きハマグリ」で有名。



桑名駅から内陸に向かって延びる三岐鉄道。
西桑名と阿下喜(あげき)を結ぶ北勢線。


Yahoo地図より引用(桑名駅付近)

ここに通称マッチ箱電車と呼ばれる小さな小さな車輌が走っている。





桑名駅周辺の様子。

四日市方面に目を向けると広い空、 開放的な広さ。
海が近い街という感じがする。


桑名駅のすぐ隣に西桑名駅があります。

改札はつながっておりませんので乗り換えるには一度外に出る必要があります。




桑名駅の改札を出て西桑名駅へ向かう時に、ホームが見える。

始発終着駅にふさわしくないほど簡素なホーム。
1番線とか2番線とかそんな概念はなく、ただ来たら折り返す!



この妙な違和感は目の錯覚ではありません。
ホームも線路も小さいのです。





西桑名駅の入口。

極めて模範的な乗り口。
「駅に隣接する他社線」という、よく見かける光景である。




おい、お前ら真昼間から何やってんだよ!




そこには自動改札が並んでいた。

意外にも(失礼ながら)ハイテク化されている。

数年前に見かけたときにはなかったような覚えがある。
当時全国のローカル線が次々と廃線になってゆく中で、この北勢線も存続が危ぶまれるという噂を耳にした。
しかし今の段階でこのような設備投資がされているということはま、だまだ存続するつもりということなのだろうか。
ちょっと安心。



ローカル線にふさわしい白い時刻表。




ホームに行くと線路までが近い。

階段を下りるようにひょいと簡単に降りられそうだ。
降りてはいけませんぜ。




ホームの端から見た光景。

軽自動車と比べても線路幅の狭さがよく判る。





振り返ると隣接する桑名駅。
桑名駅は近鉄線とJR線の共用駅で、同じ構内に標準軌と狭軌の両方を見ることが出来る。

そして隣接するここ西桑名駅にはナローゲージ。
3つの異なるゲージが並ぶ、日本でも珍しい場所なのだった。

鉄分があまり多くないのでよく知らないが、たぶんすごい所なのだと思う。




近鉄桑名駅の様子。








ホームで待っていると遠くで鳴る踏切の音。
すぐ隣のJRと近鉄線にも踏切があるのでどこの音か区別はつきませんが。

なにやら遠くから来ました。






細っ!!

まるで昔のカンフー映画のオープニングのような、縦横比を変えているような絵だが、これで合っています。

そして何だ、このとんでもなく鮮やかな色は。




この電車、速度が遅いせいか車輌が軽いせいか、かなり近くまで来ないと音がしません。
非常にゆっくり、歩くほどの速さで入線していきます。



ごわっと音がして扉が開くと、結構人が降りてゆく。

地元の人々に利用されているのがわかる。




車輌は鮮やかな色だが新しくはなく、古い車体を大切に使っているのがうかがえる。

車輌の大きさからしてホームと電車の隙間は大きめ。



「座ると向かい合った人と膝が当たる」とまで言われる椅子の幅は、コントラバスの弓ケース(長さ81cm)とほぼ同じだった。
この床下にある車輪(軌道)の幅はさらに狭い。
76cmといえば弓の長さとほぼ一致する。

車輌幅は2110mm、JRの2950mmよりもかなり小さい。

 



当然天井も低く、普通目線でこのくらい。
ドアに頭はぶつけませんでしたが、長身の人なら屈んで乗り降りするかも。



運転席を覗いてみたら意外と狭い。
しかしやはり狭いほうが落ち着くと思う。



それにしても暑い
そういえばこの北勢線はクーラーをつけたくても床下や天井裏にスペースがなくて不可能だと聞いたことがある。

訪れたこの日は残暑厳しい9月上旬、窓全開の状態だったが、風がないので駅で停まっている間は暑い。



おんや?

この先頭車輌には誰もいないが、隣の車輌の様子が違う。




発車までまだ時間があるので行ってみると何と隣の車輌は冷房が効いていた。

す〜ん

スペースがないと言いながら、一体どうやって設置したのか?
なんとキャビンの一部を占有して空調の機械が入っていた。





やがて発車の時刻が近づく。
駅の少し先にある踏み切りの警報音が聞こえる。

ナンナンナン・・・と電子音。
名鉄三河線のようなベルがチロンチロンではない。
意外とハイテクだ!

列車はガクンと揺れて動き出す。

ぶーんと低くうなるようなモーター音が響く。
結構大きな音で、ビリビリと足の裏に振動が伝わってくる。
揺れがやけに大きい。


走り出すとまもなく車輪をきしませながら大きくカーブを始め、線路は果敢にも近鉄線とJRの上を渡り、山のほうへと向かう。



気がつくと1両目に他にマニアらしき乗客の姿が。

珍しい路線なので当然マニアは多いと見え、これだけ写真を撮っていても不審がられなかった。
(単に見て見ぬふりなのだろうけど)


線路沿いの庭木や民家の軒すれすれを抜けてゆく。
車輌が小さい上に音が大きく結構揺れるので速く感じるが、実際は最高速度45kmと極めてゆっくりだった。

 




乗っていたのは僅か二駅のみ。
本当は桑名駅までお迎えの車が来るはずだったが、わざわざこの電車に乗るためにお断りして徒歩で仕事に向かった。




架線の高さは普通にあるので(たぶん)パンタグラフがやけに縦長に見える。
(架線まで低い位置にあったら踏切での高さ制限が厳しくなる。)



駅を降りてすぐのところに踏み切りがあったので線路に下りてみた。

ホームは腰くらいの高さ、やはり線路のこの狭さは不安になる。
やたら車輌の重心が高いような気がするのだが・・・。




風が強かったりすると何かとすぐ止まる上、地元の高校生の集団によってコケさせられた伝説を持つ。
カーブのところで一斉に重心を外側にかけたら転覆したらしい。
(地元民談、真意は未確認。過去に満員状態で過速による脱線転覆事故の歴史はある。)

電車の車輌は床下にモーターなどの機械が集中しているので極めて重心が低く、台車と同じで転覆することは極めてまれらしい。



極めてゆっくりゆっくり走る様子は、都会の忙しさを離れ、田園風景によくなじむ。

たまにはのんびりと、乗るもよし、見るもよし。


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