春を探しに〜稲武の春
時は3月も下旬。
世間はすっかり春(ひゃる)になってしまいました。
ちょっと前まで吹いていた冷たく乾いた北風が、どことなくぼんやりとかすんだ空気を運ぶ春の風。
桜祭りの予告の旗もはためく今日この頃。
長い冬が終わり、暖かな季節の到来は本来喜ばしいものだが、花粉症のきつい人にとっては春の訪れは憂鬱になる。
しぶーのはスギ花粉のこの時期ではなく、みんなが治まった頃に始まるので今のところ平気ではある。
しかし犬のように寒さに強いしぶーのにとって暑さは苦手であり、太陽の照りつけるこれからは冬の待ち遠しい季節でもあるのだ。
そうだ、都市部はすっかり春だが、もっと標高の高い所にはまだ冬が残っているかもしれない!
そしてようやく春の訪れを感じる季節真っ盛りではないだろうか?
いざ高原の春を探そう!
そう思い立ったら一路猿投グリーンロードを東へ東へ。
愛知高原へ向かういつもの光景。
北陸や東北まで行けば雪も残っていて、まだまだ春の訪れは遠いのは確かだろう。
そこまで遠くへは行かず、愛知県の愛知高原国定公園、稲武を目指す。
(天竜奥三河国定公園との区別が難しい。)
猿投繰グリーンロードの終点力は力石(ちからいし)インターというT字で終わる。
左が国道153号線。
足助や長野に向かい、右が豊田市街へと向かう。
稲武(いなぶ)と言えば、名古屋界隈で幼少期を過ごした人々にとっては学校行事などでキャンプに行く場所でもあるらしい。
いわゆる都会っ子が行く林間学校というものだろうか。
稲武は愛知県の東部、山岳地帯にある。
(幼少の時しぶーのは奥三河にいたので林間もへったくれもない自然の中で過ごした。)
足助の香嵐渓を越えた辺りから道は空へと向かって伸び、ぐんぐんと標高をあげてゆく。
途中の伊勢神峠は標高640mなのでそんな大げさなものでもないが。
伊勢神トンネルを抜けると、谷の向こう側の斜面に広がる農地と集落。
いかにもここは稲武らしい所!と言いたいところだがここはまだ稲武ではなく小田木というところらしい。
この界隈には近いところに3基のダムがある。
矢作ダム・・・堤高100mのアーチダム
富永ダム・・・堤高32.5の重力式コンクリートダム
黒田ダム・・・堤高45.2mの重力式コンクリートダム
(ダム便覧より)
それぞれ30分以内で行き来できるので、一箇所で一時間狂喜乱舞したとしても半日で3つとも廻れる場所でもある。
また、ちょっと足を伸ばせば新豊根ダム(116.5m)や佐久間ダム(155.5m)といったハイダム巡りも楽しめる。
周囲を山に囲まれた高原の集落稲武。
古くは三州街道沿いの宿場町(武節宿)として発展した街らしい。
と、まあここは奥三河へ行く際に幾度となく通っている場所なので、今日は以前から行ってみたかった押川大滝に行ってみた。
愛知県の中で数少ない滝のひとつ。
途中にトンネルがあるが、ここはあの有名なメロディトンネルなのだ。
トンネルの中がいわゆるメロディーロードになっていて、タイヤのロードノイズが音程を持つように設計されている。
時速50kmで通ると「どんぐりころころ」のメロディが聞こえると言うのだが・・・。
確かに聞こえる。
意外と小さい音で耳を澄ませば聞こえると言う程度。
微妙に音程が低くてテンポが遅く感じられた。
スピードの出しすぎを防ぐ意味が大きいようなのでこれでよしということか。
国道すぐ横にある押川大滝のパーキングに車を止める。
平日の夕方なのでだーれもおれーせん。
周りは山間の田園風景だ。
車もほとんど通らない。
まあ標高は500mそこそこなので雪が残っているわけでもなく、そんなに下界と見違えるような変化はない。
それでも山間の日照時間の短さからかまだ新芽が芽吹く様子は少なく、山はまだ冬の装いのようだ。
この日、川の水は多かった。
春先独特の雨が多いせいもあるが雪解けの水も含むのだろうか。
そうであってほしい気もする。
三河地方の特色か川の砂がキラキラしている。
水の流れ乗って砂の上に帯状に光る砂はまるで砂金のようだが、雲母という鉱物である。
本当の砂金は重いので岩の窪みなどに溜まっているらしい。
歩いて滝のすぐ上まで行ける。
水量が多かったせいもあって結構な迫力だ。
下流にはすごく深そうな滝壷が広がる。
高所の苦手なしぶーのはこのくらいの高さでも十分恐怖を感じる。
この滝の微妙に残念なところは、ちょっと目線を上げるとすぐに国道257号線の橋がある。
橋桁塗装工事中。
逆に考えると国道の端の上から見下ろすことができる滝ともいえる。
夕暮れ時に映る影はしぶーのと嫁。
橋を渡ってすぐのところから滝壺まで下る道がある。
ちょうど橋の下辺りに眺めるスペースがあった。
(「かんばくだい」と打てなかった)
あんれれん?
なんかさっきより滝が小さくなっとらせんか?
さらに川原まで下る道がある。
ざーーーーーー
ううん?
さらに小さくなったぞ。
この滝、落差は8mとのことだが、滝自体が斜めなので上から見下ろすとその分長く見える。
下流から眺めると純粋な高さの分のみ見える。
最初に下流から眺めて、最後に上流にゆくのがよいだろう。
川原は、まだ春の訪れと言うには早い寒々とした枯れ草の景色が広がっていた。
そんな中、唯一見つけた春らしいもの。
一本だけ生えていた土筆。
辺りを見渡してもこれ一本のほかに見つからなかった。
帰りは再び同じ道をたどって稲武の中心街へ戻る。
メロディトンネルを反対側から走ったら逆再生になるんかな?
などとくだらない想像をしつつ(バックで走ればなるのかもしれない)、反対車線(南向き)には何もなかった。
どんぐりの里いなぶ。
道の駅にはみやげ物や地元で取れた野菜などが売られていました。
ここには愛知県のものと岐阜県のものと長野県のものが揃っていた。
この建物のすぐ裏には天然温泉どんぐりの湯がある。
季節にかかわらず、時間があれば是非訪れたい。
帰りに旧伊勢神トンネルを通ってみた。
西側入り口より。
正式名称伊世賀美隧道。
愛知県屈指の心霊スポットとされているのだが、要はただの古いトンネルなだけです。
車が一台やっと通れる幅なのですれ違いはできない。
トンネル内の入ったすぐの所と出る直前に大きな水溜りがあって車が泥だらけになる。
夜に来ればそれなりに雰囲気はあるだろうけども、トンネルの出口すぐに民家があり、興味本位で大騒ぎしに行くのは慎みたいところだ。
旧道は新伊勢神トンネルの入り口すぐ横から出口すぐ横へとつながっている。
旧トンネルのほうが標高が高く、新トンネルとクロスする位置にある(アクセス路含む)ので、新道に戻る時に方向感覚がおかしくなる。
(2015.3.28)