香流川、逆モルダウの旅
川の始まりはどうなっているのか?
ほんの一滴の水から始まり、幾筋もの水が集まり、小さな流れが集まりやがて大きな流れとなる。
その周りの景色はまるで人生を表すかのごとく変化に富み、まさに大河のロマンである。
そんな情景を表した曲、チェコの作曲家B.スメタナの交響詩「わが祖国」の第二曲目、「モルダウ」は、非常に判りやすく親しみやすい標題音楽。
源流部分を表す曲の冒頭はフルートのソロに始まる。
僅かな水の流れから徐々に幾筋も集るように楽器が加わってゆき、やがて一つの流れとなってゆく様を表している。
流れは森の中に入り、流域には馬に乗った狩人の角笛が響きます。
森を抜けると農村に入り、そこは農民たちの結婚式の踊りが聞こえます。
そして夜。
水面には月の光が映り、その中で妖精達が踊る。
聖ヨハネの急流にさしかかると、川は大きく荒れ狂います。
やがてプラハの町にたどり着き、曲調は短調から長調へ変わり、モルダウの主旋律を高々と歌う。
そして古城ヴィシュフラドの横を通り、とめどなく流れてゆきフェイドアウトして曲が終わる。
ヴルタヴァ川(ドイツ語名:モルダウ)の源流からチェコのプラハを流れ、エルベ川に注ぐまでの情景が、まるで目に浮かぶかのような曲である。
しかし実際のモルダウは見たことがない。
というわけで、身近な香流川(かなれがわ)をたどってみましょう。
河口から源流まで、川の流れとは全く逆に、上流に向かって辿っていったら、どんな風景になるのか?
そして源流はどこなのか、どうなっているのか?
香流(かなれ)川の名前のいわれはいくつかあるらしいのだが・・・
など
長久手町の地中には、よく何かが埋まっているようです。
古戦場だからなぁ・・・
CANARE(カナレ)といえば、エレキギターや音響機材をつなぐあのシールドケーブル。
昭和45年に名古屋市北区に創業、49年にカナレ電気株式会社を設立。
現在でも名古屋本社は長久手町の香流川のほとりにある。
ちょっと離れているが・・・。
この関連は定かではないが、きっとあると思う。
これが香流川の河口。
ここで矢田川と合流して終わります。
さしずめモルダウでは、曲最後の「ジャン、ジャン」といったところだろうか。
右から合流するのが香流川、左から来るのが矢田川。
水の透明度は予想以上にきれいだった。
矢田川はこの後、庄内川と合流して海に注ぎます。
場所は名古屋市千種区香流橋付近。
画面左の千代田橋の上から撮影。
モルダウではここで古城ヴィシュフラドを見上げてゆく。
このテーマは交響詩「わが祖国」の第一曲目「高い城」の主題でもある。
これが高い城か?
川を少し遡ると、この辺りは名東区香流という地名。
←しぶーの
この川の祖国とも言える町。
尚、写真はすべて下流から上流方向に統一しています。
香流川はほぼ全流域にわたって護岸工事がなされた川。
この護岸工事は親水公園としての整備でもあるが、適度に自然の環境を残し水辺の生き物との共存を考えて工夫されている。
たしか魚の釣りや捕獲は禁止、大きな鯉や亀がのうのうと泳いでいました。
橋の工事をしているようです。
香流川には所々小さな堰堤のような滝があります。
取水目的でもなく、河床の高低差を減らすためか、水の攪拌のためか。
聖ヨハネの急流?
実際のモルダウ川には「聖ヨハネの急流」という部分はないらしい。
これは作曲者スメタナが、どんな苦境にもめげずに流れ進む川の様子を祖国の発展に重ね合わせて作られたという説もある。
香流川は平地を流れているため全般的に穏やかで、大きな滝や堰はない。
普段の水量もあまり多くない。
したがって大部分は写真のような二段構えの護岸になっている。
河床を固められていないのがせめてもの救いか・・・。
大雨時にはこの川幅いっぱいに水が流れる。
この川沿いのスペースには階段から自由に降りることが出来、夕方ともなれば犬の散歩や語らいの時を過ごすカップル達の姿が見られる。
このまま遡ればやがて名古屋市から長久手町に入る。
夜。
水面に揺れる月の光の中で妖精たちが戯れる。
(本当に月の光です↑)
妖精は心の清い人にしか見えません。
どういうわけか見えませんでした。
穏やかな香流川は音もなく流れている。
長久手町の岩作付近に来ると、親水整備はなくなる。
住宅街の中を蛇行してゆきます。
ちなみに岩作はやざこと読みます。
やがて両側から尾根が迫り、川と道とが通る狭い谷にたどり着きます。
細く蛇行しているのが香流川、直交する太い流れは愛知用水。
この谷には堰堤がありました。
恐らく香流川の中で最も大きな堰であり、最も大きな滝(人工)かもしれない。
農業用水の取水堰なのか、秋のこの時期には取水は必要ないらしく全開。
この場所でこの川の地下を愛知用水が通っています。
堰堤の上流には右側から合流してくる川がありました。
香流川は正面奥へと進みます。
香流川にはいくつかの支流があるが、代表的なところでは藤ノ木川、雁又川、堀越川、八前川、香桶川など。
このほかにも名もなき雨水用の川も含めると多数ある。
堰堤のあった谷を越えると、田園風景の代表ともいえる長久手の景色が広がる。
いかにもまほろば。
耳を澄ますと遠くから狩人の角笛が聞こえてきそうです。
たしか禁猟区ではないか?
遠くには愛知万博の跡地である万博記念公園(通称モリコロパーク)の観覧車が見えます。
万博が終わったら現状復帰する予定だったはずだが、いまだに観覧車があるのはなぜだ?
愛知万博の○の遺産であるリニモをくぐり、万博記念公園の西側まで来ました。
(○の中を次の中から選べ : は ・ ひ ・
ふ)
ここは三ヶ峯(さがみね)という尾根と万博記念公園にはさまれた谷。
古い世代の人々には愛知青少年公園と言ったほうがなじみが深いかも。
ここに三角形の池がある。
ここは香流川砂防公園というらしい。
池と意味不明な草原だが、大規模な土砂災害に備えてのスペースなのだろう。
川の始まりは、いくつかのパターンが予想される。
谷を流れる一本の川を辿ると岩清水が滲み出ている。・・・萌え度4
山間部に砂防ダムや溜池があり、そこから明確な川が流れ出ている。・・・萌え度2
都市部では住宅街に降った雨が雨水管に集まり、暗渠となって流れ地上に突如として出現する。・・・萌え度1
劇的な所では静岡県の柿田川や朝霧高原の白糸の滝のように、大規模な湧水から始まっている。・・・萌え度5
しかし、名前のついた川の源流を辿るとなると、場合によってはやがて名もなき谷川となって、最後は本流と支流の区別がつかなくなる恐れがある。
果たして香流川はどのパターンか?
ん?なんだこりゃ?
この丘の上は万博記念公園、その地下から滔々と流れ出る水は・・・
げーーーーっ!!
茶色いし泡立っているし・・・
トンネルの上に何かある。
怪しげなプラスチックケースの上には太陽電池、水質連続計測中と書かれていますが・・・。
計測するだけではきれいになりませんでしょうが。
もともと香流川の源流は、現在の万博記念公園(愛知青少年公園)のある山林だったらしいのだが、公園の開発に伴ってかなりの生態系が破壊されたようです。
ということは、
ももも、もしかしてこれが源流!?
(萎え度5!)
いや、砂防公園の上流からは、かすかだが水が流れてきている。
源流はまだまだ。
この谷は長久手から豊田方面へ抜ける道があり、交通量がすこぶる多い。
猛スピードの車がひっきりなしにビュンビュン通ってゆく。
この道と平行して香流川はある。
水はわずか。
いよいよ源流に近づいてきました。
谷幅はいよいよ狭くなり、道路と川は接近する。
もはや川だかドブだか判りません。
この水も、両側の尾根に降った地下水が集まったものだろうから、晴天が続く時には干上がるのだろうか。
そして最後は迫る対岸と谷と道路がほぼ一列に並ぶほどに接近。
日没後、いよいよ写真を撮るのが困難になってきた、まさに黄昏の中に現れたのは・・・
砂防堰堤。
砂防ダムのすぐ下流にはごくごくわずかに水があるようだが、堰堤上流からの水はない模様。
やがて谷は道路と重なって終わり、道路はその上を回りこむように進む。
砂防堰堤の上流の谷を覗き込むが、そこに水はなかった。
この先は確実に尾根となり、道路は峠を越える。
つまり、この先に川の始まりはありえない。
↓航空写真で砂防堰堤&谷がみえる。
その谷の最後は横切る道路によってはっきりと分断されている。
ここから上流は採砂場なのか、私有地で入れない。
風雨によって浸食された地形は、あたかも長久手グランドキャニオンと呼ぶ(勝手に命名)にふさわしい光景である。
香流川の最も上流から見た景色。
香流川はここから始まる。