趣味の電気工作

怪しげな改造、改良と称しての破壊など、気まぐれに電気工作で遊ぶページ

ペルチェ式除湿機の修理


「すこー・・・・」

スタジオしぶーの(我が家の音楽部屋)で活躍していた除湿機。

この部屋は楽器を保管していることもあり、温度湿度の管理には特に気を使わなければならない。

木で出来た楽器にとって極度の乾燥は板の割れが起こることもあり、非常に危険な状態。
どちらかといえば湿気よりも乾燥しすぎにならないように気を遣っていた。

しかし実際に湿度計を設置してみて、我が家は思いのほか湿度が高いことがわかった。


さらにどんなに乾燥した冬場でも、密室で楽器を演奏すると人体の熱気でみるみる湿度が上がってゆくのがわかる。

一応エアコンの除湿機能はついているが、気温が低い時にはなかなか発揮しない。




そこで24時間稼働させるこの除湿機が活躍していた。

稼働音も「すこー」と小さな音がする程度。
本来ならば押入れのような狭い空間用として売られている。

除湿能力はそんなにないが、昼も夜もほんの少しずつ除湿をする、ちっこいボディで静かに仕事していたこの健気な機械。


しかしながらここしばらくめっきり機能しなくなり、稼働はするが一向に水が溜まらなくなってしまった。

というわけでそろそろ新しい物に買い替え、コイツはお蔵入り決定となっていた。



どうせなら最後に分解して、ダメ元で中を見てみようか。



ご注意!

「趣味の電気工作」とありますが、100Vを使用する家電を分解・改造することは感電・火災などの大きなリスクを負います。
またメーカーの保証や修理も効かなくなるので完全に自己責任になります。



除湿機には2タイプあって、ひとつはエアコンにあるようにコンプレッサー式、もうひとつはペルチェ式というものらしい。

調べてみると構造は違えど、除湿する原理は同じらしい。


例えば氷の入ったコップを部屋に置くと、コップの周りに水滴がつく。
これは空気中の水分が結露したもの。

これを集めれば空気中の水分量が減って湿度が下がってゆくという仕組みである。



この方式で除湿するにはとにかく低温を作り出さなければならない。



人は古来から真冬に水を沸騰させることは出来ても、真夏に氷を作ることは難しかった。
イカヅチの力を手に入れてからも、大抵は熱に変わってゆく中で低温を作り出すのは大変だ。

今でも家電は熱の出るものは多くても冷やすものは少ない。
ある部分を冷やすことで必ず熱が生じ、その熱の方が大きい。




コンプレッサー式は単純に言うとコンプレッサーでガスを圧縮→膨張させて低温を作り出す。
そしてこのペルチェ式というのはペルチェ素子というものがその役目をする。


ペルチェ素子。
なんじゃそれは。


一体どういう仕組みなのだ?



思ったよりも単純な作りだ。

完全に機械式なのか?だとすればもしかすると直せる余地があるかも。


この物々しい放熱フィンが怪しい。

二つの放熱フィンに挟まれたこの3センチ角のパーツこそがペルチェ素子というものらしい。



ペルティエ効果・・・・異なる金属を貼りあわせて電圧をかけると、接合点で熱の吸収放出が起こること。

よくわからんが単純に言うとこの板に電気を流すと、一方の面が冷たくなりもう一方の面が熱くなる。
この冷たくなる原理を利用して空気中の水分を少しずつ集めてゆく仕組みらしい。


つまりこのペルチェ素子一枚に、この除湿機の機能すべてが任されているといっても過言ではない。



それにしてもこのペルチェ素子周りの放熱フィンのほか、風を送るファンにスイッチ、実に単純な仕組みだ。
これでは趣味の工作レベルで作れてしまう代物ではないか?

と思ったらこんなところに電子的な制御基盤があった。
なるほど、空気の流れる部分、除湿する部分とはしっかりと分けてある。

単純な接触不良ならば何とかなるかもしれないが、ここがやられていては手も足も出ない。

一体どこが壊れているのだろう。




そしてさらに調べた結果、ペルチェ素子には寿命があるとか。




ではこれを交換すれば元通り使えるのではないか?

幸いにしてこのペルチェ素子だけ販売されている。




ペルチェ素子を引っぺがすと、なにやら白いもので貼っつけてあることがわかる。

この白いものは固まる放熱シリコンというやつだろう。
たしか昔買ったものがまだあるはずだ。



げげっ!固まっている!

前回使ったのはいったいいつだろう?
たしかかなり昔にラクシオンLEDのエミッタを貼り付けるのに使った記憶が。

あんまり出番がないので工具箱の底で眠っていたが予想通りの展開。

しかたがない、素子が届くまでに大須に出向いて買ってくるとしよう。



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名古屋市中区大須

家電にコンピューター、オーディオ機器からマニアックなものまで大抵のものが揃う街だが、近年にアニメショップやメイドカフェも増えており、中部地区最大のおたく街としても悪名高い。

怪しげなアクセサリーや骨董品を扱う店も多く、あれこれ見てまわるだけでも半日は飽きない。



このほかにも大須観音とか万松寺とか見所は多い。

大須名物?といえばこの信号機。
はじめて見たときにはその異様な姿に驚いた。

アームによって交差点の真上に吊るされ、自動車用と歩行者用が一つになった斬新な形。

撮影したのが夕方だったのでもっとわかりやすい画像。


LED化される以前の様子。
(画像はWkipediaより引用)

きっとすごく名物なのだろうと思ったが、その後あまり話題にならない。



このあたりは中部地区最大の電気街だったが近年は随分小さくなってしまった。
それでも僅かに残る実店舗にて、マニアックなパーツを探して歩くのもまた一興。

もう注文してしまったので探さなかったが、実はペルチェ素子もあったりして。





数日後、届いたペルチェ素子をテスト駆動してみる。
「単三乾電池1本でも効果が体感できる」とあったのでつないでみた。

なるほど、片面はすぐに暖かくなって、反対側が徐々に冷たくなってゆくのがわかる。
これはなかなか面白い。

応用しだいでは超小型冷蔵庫とか作れそうだ。


(すでにあるし)
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これでようやく滞っていた作業が再開できる。


分解したまま箱に入れた状態で保管していました。

そう言えば関係ないけど、加湿器はで除湿機はなんだ。




大須で新しく買ってきた固まる放熱用シリコーンでべっちょと貼り付ける。

 

ちなみに放熱用シリコーンは固まるタイプと固まらないタイプがあった。



翌日、本体に組み込んで稼働させてみた。

配線むき出しなので感電しないように注意しつつ、温度を確かめると・・・。

おお、すげー!

みるみる冷たくなる、みるみる熱くなる。

やはり放熱フィンと冷却ファンがないとこの温度では素子が壊れてしまうそうだ。
テスト稼働はOKだったのですぐに電源をオフ、元のように組み立てた。



かくして一度はお蔵入りになった除湿機だったが、半ば無理やりのパーツ交換によりなんとか延命することが出来た。




1時間稼働させてみたら、タンクの入り口にほんの数滴の水が溜まっていた。

この時期我が家で稼働させた場合、一日に除湿できるのはわずか大さじ一杯程度。

一晩に1パーセント下げるくらいがやっとの微々たる能力だが、それでも日夜「すこー」と健気に働く除湿機であった。


(2016.11.25)


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