趣味の木工
趣味と実益を兼ねた木工作業の数々 |
楽器の凹み直し2連発
木製品は強くぶつけると凹んでしまう。
それが楽器だったりすると気分も凹む。
過去記事→ウクレレの凹み直し
直せるものなら直したい。
しかし楽器の修理として傷をきれいさっぱり直す修理はあまり一般的ではない。
車なら板金から塗装まで、素人がぱっと見わからない程度まで修復が可能である。
しかし楽器の場合は修復や塗装によってサウンドが変わってしまうのを避けなければならない。
弦楽器の世界ではついてしまった傷はできるだけそのままに、音や品質に影響があるレベルのものは保護のために修復するといったところだろうか。
やはり見た目にこだわると言うよりも音色重視でなるべく触らないという世界だ。
もちろんギターとか全塗装修理というのもなくはないが、サウンドのことを考えると請け負う職人的にあまり気乗りがしないのも事実だ。
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こりゃまた見事に凹んでしまったサイレントベースの指板。
ぶっ倒して他のスタンドの足に激突したらしい。
これは教室の備品ということなので金額的被害よりも演奏しやすさの問題なのだか、幸い指板は塗装もないので修復しやすい。
傷の状態をよく確認。
材はロースウッド、どのように力がかかったか、どのくらいの深さか。
濡れた布を当てて十分に湿らせた後、凹んでしまった木はアイロンで修復。
濡れた布の上から半田ごてを当てて加熱する。
ひしゃげた木の繊維が水を吸って膨らみ、さらに熱による膨張で元に戻ろうとする。
大分目立たなくなりました。
ひしゃげた端の部分は木の繊維が折れてしまっているので完全に修復は諦める。
幸い指板は塗装がないので多少削って馴らすことが出来る。
保護のため油を塗って完成。
ぱっと見はわからない程度に修復できました。
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楓の木目か美しいハープについた痛恨の打痕。
アイロン修復である程度は戻るがそれ以上は難しい。
塗装がされているのであまり深追いすると凹み周辺への影響もある。
あとは塗料を使って傷を埋めていく方法。
塗料で埋めては乾かし、数回に分けて行う。
塗料は溶剤が揮発して体積が減るので凹みができる。
盛り上がるまで埋めたら、スクレーパーで慎重に削り周りの平面と合わせる。
できるだけ修復部分以外を触れずに、盛り上がった部分だけを削ってゆく。
サンドペーパーを使うと盛り上がりの周辺を削ってしまう恐れがあるので難しい。
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目で見て指で触って平面を確認する。
周りの塗装と段差がないように馴らして磨く。
さてここで問題なのは、磨いたので塗装に艶が出てしまう。
吹き付け塗装でつや消しの場合は、完全に消し去るには全塗装しかない。
さすがにそれは出来ないので、ある程度つや消しを再現してごまかしておく必要がある。
楽器用のコンパウンド(荒目)と楽器用のオイルでザラザラと艶の部分を削ってゆく。
削りすぎないように慎重に、何度も拭き取っては確認しながら少しずつ行う。
このテクニック、アルミニウムや真鍮をクレンザーのような研磨材で素手磨きした場合にきれいな艶消しになるのを応用。
画像ではわかりにくいが演奏した傷がついている。
磨くとそこだけ艶になってしまうので手の出しようがない。
このテクニックを使えば艶消しのままある程度修復が可能だ。
ただしこの方法は少なからず塗装を削ることになるの頻繁に行うべきではない。
深追いは禁物、ある程度艶消しになればよしとします。
木で出来ている以上、一度凹んだら完全に元通りは不可能だ。
修復もいつもうまくいくとは限らない。
気分の問題になるのだが、品質上問題がなければ気にしないのが一番。
心情的になかなかそうはいきませんが・・・。
(2019.6.21)