趣味の木工
趣味と実益を兼ねた木工作業の数々 |
しぶーの絶賛愛用中の棒ウクレレ。
指板や糸巻きは何かの流用でネックやボディは自作。
棒状なので場所もとらず、気が向いたらいつでも弾けるように傍らに置いてある。
ソリッドボディなので夜中でも弾ける。
しぶーのが厨房(中学生)の頃、ギターが欲しかった。
当時チェッカーズとかブームになっていて、バンドでギターを弾く姿は男子達の憧れだった。
カセットテープにダビングした音楽を毎日すり切れるほど聴き、掃除の時間もホウキをギターに見立ててバンドごっこをしたものだ。
(男子掃除しろ)
その他、テニス部のラケット、製図の授業で使うT定規もまたバンドごっこのアイテムとなった。
幸運にもしぶーの家には安物のクラシックギターが転がっていたので、それでギターコードを覚えた。
フォークギターのようにジャカジャカやったもんだから、サウンドホールの周りが傷だらけになってしまったのもいい思い出。
エレキなんぞ高嶺の花で、買ってもらえる子供も少なかった。
(エレキは不良の物という風潮もあった)
当時から日曜大工のまねごとをしていたしぶーのは本気でギターを作ろうかと思った。
いや、本物のギターなど作れるはずもなく、考えたのは木の棒に弦を張ったギターもどきだった。
結局、糸巻きやフレットなど必要なパーツの入手が難しく夢に終わった。
しかし、今なら作れる。
棒ギターなら。
【ギターまめちしき】
ギターほど世界中に広まっている楽器も珍しい。
携帯できるサイズでソロから伴奏までこなし、大衆音楽の中心的存在。
クラシックからフォーク、エレキなど形を変えて広まっている。
それでも基本的な調弦は同じ、ミラレソシミという完全4度の中に3度を挟む(ソシの部分)絶妙の調弦はすごい発明だと思う。
世の中のアコースティックギターは大きく分けてナイロン弦とスチール弦に分かれる。
ナイロン弦アコースティックギターはクラシックギター・ガットギターと呼ばれ、スペインの伝統的なギター。
クラシック曲の他、ボサノヴァや演歌に使われる。
スチール弦アコースティックギターは一般的にはアコギとかフォークとか呼ばれている。
両者は張られている弦が違うため楽器の構造も大きく異なり、転用はできない。
いかに棒だけとは言え、演奏できるギターを作るとなると、さすがに全くいちからと言うのは難しい。
幸いに我が家にフォークギター製作キットの残骸があったのでネックと指板、そしてパーツを流用することに。
ヒールの部分はカットした。
コレに細長い棒状のボディをつないで延長し、弦を張る。
しかし、ギター組み立てキットならば、そのまま組み立てればいいのでは?
じつはしぶーの家にはフォークギターがある。
そしてナイロン弦の張ったクラシックギターが欲しかったのだ。
さらに夜中も気軽に弾ける、ボディのない消音ギターが。
ボディに使う部分はホームセンターで買ったラワン材。
裏板と横板をコの字に接着して強度を出す。
できるだけお金と手間暇かけず簡素に、弦が張れて演奏できればそれでいい。
ボディとネックをとにかく一直線に接着する。
ここがいい加減だと楽器として成立しなくなってしまう。
このネック、マホガニーとはほど遠い謎の材木製で、指板も着色しただけの仕様。
きちんと作っても残念なギターが出来上がる。
しかもこのネック、長年の放置により乾燥したせいかかなりの逆反りが発生していた。
トラスロッドがとか言うレベルでなく、そのまま組んでも演奏不能の楽器ができあがる状態。
熱や湿気による曲げも試みたが結局戻らず、カンナで削って平面出しを行った。
この段階ですでに一から作った方が楽な、よくある本末転倒コース。
ヒールの部分がないので裏板をかぶせるように接着して強度を出してみました。
バイオリンの裏板のような構造。
張る弦がナイロンなのでなんとかなるはず。
スチール弦だったら持たなかったかもしれない。
ネックの接着とカーブの仕上げは念入りに行い、補強のために木釘も打った。
ここが出来れば、ほぼ完成したも同然。
ブリッジは付属のものは使わずに、クラシックギターのようなものを作ることにした。
テキトーに貼り合わせてあとで周りをカットする。
つかこのキットのパーツ、フォークピンの穴も開いてないし、簡単な工具だけでは難しいのでは?
フォークギターは弦をピンで留めるため、ブリッジを表板に接着した後に表板も貫通するように穴を開ける必要がある。
なんじゃこれは、ヘッドの穴が小さくて穿ち直さなければ入らない。
本当にこのキット、きちんと作るのが大変なのでは?
しかも付属のパーツはなんとプラスチック製。
まあこの場合、高級感とかいらないので軽量化のためにはいいか。
【ギターまめちしき】
ギターの弦の幅は演奏方法に大きく影響する。
参考画像
手前(左)がクラシックギター、奥(右)がフォーク仕様のエレガット。
クラシックギターは弦を一本ずつ弾くので弦の幅が広くなっている。
指板はフラットでポジションマーク(目印)が何もない。ネックとボディは12フレットでジョイントする。
指板上端の幅(ナット幅)は標準52mm。
ヤマハサイレントギターのナット幅はSLG200Nが50mm、SGL200NWが52mm。
実際の弦の幅は(1弦の内側から6弦の内側まで実測)40mm弱か40mm強というほんの僅かな違い。
※メーカー公称値ではなく実際の測定なので誤差があります。
一方スチール弦ギターはコードを押さえやすくするためネック幅が狭い。
ナット幅は43mmから44mmくらいが標準。
ブリッジ側の幅にも種類があり、コード弾きに特化した50mm幅、フィンガーピッキングしやすい55mm幅が標準。
50mmと55mm、メーカーや型番によっても違う。
アメリカのギターなどさらに広いものもある。
実寸58あるmm。
※メーカー公称値ではなく実際の測定なので誤差があります。
ブリッジの弦の幅はクラシックギターと同じ60mm、フィンガーピッキングに特化した設計。
ブリッジを長いタッピングで打ち込み、正確な位置を決めるため水糸を仮張りする。
あえて接着せず、あとで位置の修正が出来るようにネジで留めたが、結果的には微調整の必要もなくそのまま採用。
ネックにはキット本来の付属品の※トラスロッドを入れようか迷ったが、結局使用しなかった。
※トラスロッド・・・ネックの中に埋め込む補強のための棒。
フォークやエレキでは弦の張力が強いので埋め込まれている。
ブリッジの正確な位置も決まったのでパーツをつけて仮組立て。
弦幅60mmにフォークギターの指板は幅一杯ギリギリ。
一応サドルはフォークギターの指板のカーブに合わせてカーブしたもの。
もう少し弦幅の狭いブリッジを作ろうかとも思ったが、きっちり弾けば問題なく演奏できたのでこのままOKに。
上ナットはフォーク仕様、指板はカーブド仕様、ブリッジの弦幅はクラシックギター仕様という世にも希な組み合わせ。
ここから徐々に弦を張って様子を見る。
ネックのジョイント部分や指板の接着、自作ボディの強度に問題がないか見つつ、少しづつ調弦を上げてゆく。
設計や接着が甘ければ崩壊してしまう、楽器を作ったときに一番緊張する時だ。
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トラベルギターなど検索推奨。
ヤマハサイレントギターも取り扱いあり。
試験運用が成功し、楽器として機能することがわかったので再び分解して最終仕上げ。
細かいパーツの合わせと、全体の角落とし、磨き。
一応演奏上は問題ないのだが、この部分が何とも手作りっぽい。
手作りなので仕方がないのだが、ここを塞げば少しは製品感が出るのかな?
と言うわけで塞いでみた。
かまぼこ板で。
接着せずにぴったり挟まっているだけ、これだけでなぜかキリッとする。
製品のデザインって大事だ。
完成、横長なので画像は寝かしてみた。
棒だけなのであまり見栄えがしない。
その分場所をとらないので、棒ウクレレ同様傍らに置いていつでも弾ける。
裏板には可動式延長フレームがねじ止めされている。
楽器本来のボディとなる部分。
コレがないと構えて演奏するのに楽器が安定しない。
一応試作品なので別のサイズに交換が可能。
透明水性塗料で軽く塗装しました。
見た目の仕上げというよりも、汚れないため。
構造上ボディは空洞なので替え弦など物入れになっています。
弦の巻き方が無茶苦茶なのはコロナ鍋の影響で、切れてしまった弦を買いに行けず結んでしのいでいたため。
完成して演奏してみたが、ボディがない割に意外と大きな音がする。
市販のサイレントをうたうものは中々優れていることがわかる。
左手はエレガット仕様、右手はクラシック仕様とチグハグだが、その分練習になる。
もしこんなギターが欲しくなったら、正直、買った方が安い。
(2020.5.26)