趣味の木工
趣味と実益を兼ねた木工作業の数々 |
ウクレレ割れ修理2
いらっしゃいませ。
今回の依頼はコア○ハというメーカーのウクレレ。
ハワイ製でボディからネック、指板に至るまですべてハワイアンコア材が使われている。
いかにもハワイらしいウクレレだ。
音色もカランと明るい。
サドルとナット以外はすべてコア製。
美しい縞模様が特徴。
ん?この袋は?
こここ、これは・・・
そして・・・
何じゃこりゃ?
うわああ・・・。
今回の事故は落下。
ケースの留め金を掛け忘れたため、蓋が開いて地面に激突したとの事。
こんなことが起こらない様に、ケースを持つ際には念のため蓋に指をかけたり、蓋を身体の方に持つ習慣をつけるべきである。
修理にかかる前に現状をよく観察。
ひゃー、向こう側が見えるよ。
ありえない光景。
外側をぐるっと点検した所、アスファルトに落下したというわりには幸い他の部分に被害がない。
ところがノックで確かめると、何やら他の部分からも不吉な音が。
この辺りから不吉な音がするということは、もしかしたら力木(ちからぎ)が剥がれているかのしれない。
というわけで中もくまなく点検。
チカーミラーは便利だ。
あれ?
力木がないーーーー!!
裏板の一番幅が広い部分にあるはずの補強材がない。
ラベルにまでラッカー塗っちょる。
それにしてもこのコア○ハ、実にシンプルな構造。
通常あるはずの、横板と裏板、表板の境目にライニング材(糊台)もない。
ということは板の厚みだけでくっついていることになる。
大丈夫なのか?
中西ウクレレの内部。
表板、裏板には2本の力木がついている。
縁の部分の内側にはギザギザのライニング材が入っている。
力木はライニング材の上に乗るように作られ、強度を保つ仕組みになっている。
それに比べて実にアロハな設計。
1995年辺りの創業だから歴史のあるウクレレではないが、長年使用した場合の耐久性とかどうなんだろう・・・?
この辺りの裏板も剥がれていました。
今回の修理箇所は・・・
裏板割れ欠け損傷、1箇所。
裏板剥がれ1箇所。
欠損している部分やつぶれてひしゃげている部分はなさそうなので、接着と部分塗装だけで何とかなりそうです。
破断面のささくれを処理してゆきます。
ささくれが一本でも噛み込むと接着面に隙間が開いて不完全になるので慎重に作業します。
向きを直し、折れ曲がっていたり元に戻らない物は除去。
穴から表板の裏側が見える。
大きなブリッジプレートが一枚、ビス留めされている。
縦に走るブレイシングはなく、シンプルな作り。
割れた箇所の周囲をよく観察すると、欠け落ちた部分の周りの残った部分にも複雑にヒビが走っている。
ささくれを処理したら破片が隙間なくぴったり合いました。
割れの部分を何で貼ろうかさんざん迷ったが、金輪際剥す必要がないと思われる部分なのと、ヒビ割れが複雑で出来るだけ早くかっちり固まるように瞬間接着剤を使用しました。
粘度の低い接着剤を流し込み、指で押さえて接着。
内側にもしっかり浸透していることを確認。
裏板なので弦の張力があまりかからないのと、縁に近い部分なのでパッチは入れないことにしました。
例によって乾燥、そして眺め実習。
翌日、接着剤がしっかり乾いたのを確認。
瞬間接着剤は空気中の水分と反応して硬化します。
固まった後は白くなる。
裏板の剥がれた部分は、中を観察した所、貼ってあるのがニカワではなさそうなのでタイトボンドで貼りました。
横板が膨らんできていて少し押さえる必要があったが、あまり力をかけて無理に接着しても長年かけていずれまたトラブルがでてくる恐れがあるので適当な所で貼りました。
横板と裏板で少しズレが出るが、出来るだけ楽器に無理な力がかからないほうが望ましい。
キサゲ(カッターの刃)で、はみ出た接着剤をこそいでゆきます。
キサゲは鋼の角の部分を使ってこそいでゆく原始的な作業ですが、微妙な手応えに合わせて繊細な手加減が可能な為、精度の高い加工が可能になります。
技術と根気が必要なのは言うまでもありません。
指触ってで確かめながら丹念に平面にしたのち、サンドペーパーで表面を均します。
いきなりサンドペーパーで削ると盛り上がった部分の周囲が削りすぎてしまうのでペーパーはあくまでも表面処理のみにします。
段差が全くなくなったらいよいよ塗装の準備にかかります。
所々塗装がはげて木の地肌が露出している所があります。
途中、削りながら観察したが、どうもこのウクレレは着色されておらず、下地塗料も確認できなかった。
もしかすると透明ラッカー直塗りかもしれない。
ほんの一部しか剥していないので定かではないが、今回狭い部分塗装なので下地塗装はしませんでした。
マスキングをしました。
何じゃこりゃ?
ちょと、真面目にやってくんなきゃ困るんだよぉ〜!
いや、これでいいんです。
少々見栄えは悪いが、部分塗装なのでいたしかたない。
マスキングが微妙に浮いているのはボカシのため。
塗装の境目をフェイドします。
外に出て透明ラッカーを吹き付けました。
外は風が強かったので風向きに気をつけながらの作業でした。
風下に民家がありましたが、塗料自体は空中ですぐに固まってしまいます。
乾かしながらほんの数回、補修部分が保護できたらよしとしました。
部分的に塗膜が厚くなってテカテカになりました。
若干ムラになったが、最終仕上げの磨きでなんとかします。
ラッカー塗装は乾きが早いので数分でべたつかない程度に乾きます。
乾燥中。
ラッカーがほぼ乾いたら最終仕上げ。
境目の部分を均し、厚塗りになってテカテカの部分をサンドペーパーで適度に荒らして周りと違和感のないようにごまかしてゆきます。
研磨剤を指につけ磨きます。
指のほうが細かい手応えがわかり失敗が少ない。
段差もなく、継ぎ目も言われなければわからない程度になりました。
幸いコアの木は縦方向に目立つ木目が走っているので継いだ部分がわかりにくい。
研磨した部分がまだ多少曇っています。
このあと更に磨きをかければ完成。
あとは弦を張って出来上がりです。