鶴舞線の顔
名古屋市営団地下鉄鶴舞線
地下鉄と言いながら地上に駅がある。
上小田井から赤池までを結ぶ路線だが、その先には名鉄犬山線、名鉄豊田線が連結しており岩倉行き、豊田市行きもある。
鶴舞線はブルーの路線
そのため名鉄の赤い電車も乗り入れており、名古屋の地下鉄の中ではもっとも車両バリエーションに富んでいる。
地下鉄を走る名鉄
鶴舞線の車両が名鉄線を走ることもある。
その中で最も古いのがこの車両。
調べてみると3000系というらしい。
スパッと切ったように平らな前面にレトロな丸い目玉、黒光りにも似た輝きはステンレスの重鎮と言った感じの風格ある車両だ。
内装はクリーム色というか、微妙にくすんだ色をしているのが特徴で、温かみがあるとえいば聞こえがいいが、妙な古臭さを感じる。
またそれがいい。
なにやらタバコのヤニで色づいてしまった喫煙室の壁のような色合いだ。
近年古い車両は続々と新型車量にとって替わり、この3000系も見かけることも少なくなってきた。
さてこの車両、6両編成で運行されているのだが、車両の途中に奇妙なものがある。
豊田市行き方面に向かって3両目の頭。
乗務員室?
なんとこれは運転台ではないか?
この3000系の車両、開業当時はもともと4両編成で走っていたらしい。
Wikipediaの鶴舞線より引用
3000形 - 開業時より使用。車体はステンレス製で、制御方式は電機子チョッパ制御。当初は4両編成であったが、1993年の全線開業時に6両編成に組み替えられ、その際に余剰となった2両(3706・3806)は3050形3159編成の中間に組み込まれた。
とまあ詳しいことはよくはよくわからないが、4両編成を6両編成にするにあたって色々と合体させてこうなってしまったということなのか。
なにはともあれ、運転台が途中にある状態で運行されているようだ。
先頭車両が途中に組み込まれているということは、当然ながらそこには電車の特徴とも言える顔がある。
この狭い中に顔が隠れている。
役目を終えて、もう決して日の目を見ることのない先頭車両の顔が、人知れず連結器の部分にはさまって走り続けている。
・・・のか?
しかし現在運行中の車両の写真を撮るのは意外と難しい。
なにせ絶えず乗客がいるので、その中でカメラを出して写真を撮る行為は不審極まりない。
ましてや発車間際の電車に近づいて写真を撮る行為は列車運行の支障になるので絶対に行ってはならない。
さすがにこの古い車両の出現頻度はそう多くもなく、時間をかけて待っているのも大変だ。
かくして数少ないチャンスに、生き馬の目を抜く勢いで写真を撮るプロジェクトが始まった!
運転台が途中にある状態というのは名鉄線で実によく見かける。
名鉄線の頭同士の連結の場合にはどちらも現役の頭同士、田舎のほうの路線では途中の駅で切り離されたりする。
名古屋駅を中心に四方八方に行き先がある名鉄だからこそ、このような連結なのだろう。
中は通り抜けはできない。
前と後ろでは行き先が違っていて、うっかり間違ったほうへ乗って居眠りなどしていて気がつくと知らない所に連れて行かれて「ピギーッ!」となったりするので注意。
車内からの様子。
走行中に別の車両がこんなに近く見えるというのは結構恐ろしい状態なのではないだろうか?
(衝突事故の瞬間と思えばだが・・・)
鶴舞線3000系連結部分の車内の様子。
普通に通り抜けることができるが、運転席の部分は閉鎖されている。
妙に長い通路は特急電車のトイレや洗面台がある部分のようでちょっとカッコいいと思ってしまった。
できるだけ乗客のいない状況を狙っての撮影を試みたが、なかなかチャンスはめぐってこない。
しかし携帯を片手に待ち構える様子は如何に不審に映ったことだろう。
(運転台のある連結器の写真を撮るという行為が理解不能だと思う)
運転席側の窓はふさがっているので中は見えない。
運転席の反対側(進行方向左側が運転台、その右側)は中がうかがえる。
がらーんと何もない状態。
車内からは先頭の顔の様子はわからない。
連結先の車両にこちら向きの窓がないためだ。
ということは、このガラスの外側に顔があることを確かめるには、駅に止まっているわずかな時間しかない。
電車が停車して乗客が降り、発車ベルが鳴るまでのわずかな時間。
こんなところを覗き込むのは一体何事?
ましてや手を伸ばしてカメラを向けているのはなぜ?
あ、番号が書いている。
これはまさしく先頭車両の名残だ。
しかもワイパーが残ってる!
おる?
顔おる?
見えん。
発車ベルが鳴ったら、速やかに電車から離れないといけない。
何度かのチャレンジでここまで画像に収めたが、いまだに顔は見えず。
たしかワイパーのすぐ下に目がついているはずではないか?
もう少し、ほんのもう少し奥までカメラが入らないだろうか?
そろそろ成功しないと、いい加減通報されるぞ。
ん?
目、ねぇがや。
どうも、前照燈は取り外されてしまっている様子。
鉄板でふさがれていて平らのようだ。
おそらく運転台などの機能はもう撤去され、どう転んでもここは先頭にはなりえない。
別の車両の様子。
目の部分はしっかりと塞がれているようだ。
さすがに目がついていると、今は引退を余儀なくされた先頭車両の怨念が挟まっているようでさぞ不気味だったことだろう。
と、実はちょっと期待してしまったのだが・・・。
色々と調べてみると、このような車両は「運転台撤去車」というジャンルに分類されているらしい。
「鉄」の世界は奥が深い。
(2015.12.1)