矢作ダムの貯砂ダム
矢作(やはぎ)ダムのさらに上流に、貯砂ダムがあるらしい。
貯砂ダムとは水を貯めるのが目的ではなく、下流に砂が流れないようにするための砂防ダム。
ダム湖入口に貯砂ダムがあることは珍しいことではなく、色々なダムでよく見かける。
ダム湖に流入する所で砂を貯め、ダム湖が砂で埋まるのを防ぐ目的がある。
矢作ダムに隠れてその存在は無名だが、ダム湖を守る重要な役割。
そんな縁の下の力持ち的なダムを拝んで見るとしましょうか。
矢作川は名古屋から最も近場の川リゾートともいえる。
名古屋の東方、長久手町のさらに東、猿投グリーンロードの枝下(しだれ)インターを降り、矢作川をさかのぼる。
(Yhaoo地図より)
枝下インターを降りて一般道とぶつかった先に廃線跡があることに気がつく。
(Yahoo地図より航空写真)
かつてここの川沿いを走っていた名鉄三河線の通称山線。
この枝下インターのすぐそば枝下駅跡がある。
(画像の左下)
そこから少し上流に遡ったところに大きな廃鉄橋もある。
ぱっと見たところ今でも現役で使われていそうな状態のプレートガーター橋。
廃線になったのが2004年なのでまだ新しい。
阿摺ダムの横を通り抜け、川沿いに道を登ってゆく。
両岸に山が迫る矢作川沿いの景色。
この矢作川には広瀬やな、川口やな、小渡やながあり夏場は観光客で賑わう。
過去にこの川沿いの河川敷公園で懐中電灯のオフ会が開かれたこともあった。
川沿いの山道を快調に走っていると突然視界が開けて笹戸温泉街が現れる。
後続車がいない隙を狙って車を止めて車内からあわてて撮ったので思いっきりブレていますが・・・。
笹戸温泉を過ぎてさらにしばらく走ると小渡(おど)の町が現れる。
川沿い小さな町ではあるが「夢かけ風鈴」など、風流な祭りのある町だ。
さらに山道を走り、矢作ダムに到着。
堤高100m、愛知県と岐阜県の県境にあるこの辺りでは最も大きなアーチダム。
おんや?
なんかやってる。
ゲートの補修工事をしているらしい。
こうして雨の少ない冬の間に色々と手入れをしておくのですね。
シーズンオフに毛替えをしたり弦交換したり、楽器の手入れをするのと同じか。
むむ?ゲートが開いているのに水が出ていない。
上流側にもゲートがあって挟み込むようになっているわけか。
なるほどあのゲートだけで水圧を受け止めるのは酷というもの。
ゲートの開いた穴は遠目に見ると小さく見えるが、キャットウォーク(堤体の細い通路)や扉の大きさから想像するに車が余裕で通れそうな大きさ。
あのトンネルの向こう側には今でも満々に水が貯まっていると考えると作業する人もさぞ恐ろしいだろう。
この矢作ダムは冬に間は水位が低い。
ダム湖名は奥矢作湖。
この景色、見覚えがある。
ここはライブカメラの映像と同じ場所ではないか!?
(矢作ダム上流ライブカメラの映像より)
と、いうことはこの近くにカメラがあるということ。
(白々しい)
ありました。
この前に立ってピースサインをしていれば、運がよければ写るかもしれない。
そのあほな行為が世界中に配信されるが。
曲がりくねったダム湖沿いの道を進むこと約10分。
もうこの辺りはダム湖ではなくて川になっています。
上流の貯砂ダムまで来ました。
え、どこ?
ザーと音がする。
コレ?
この貯砂ダムらしからぬヤツは、2000年の東海豪雨の際にすっかり土砂で埋まってしまい用を成さなくなった姿なのでした。
一応コンクリートブロックが並べられて多少の砂防効果を保とうとしている。
さて、ここまでは冬の間。
矢作ダムは冬の間は水位を下げているが、春になるとこの貯砂ダムはダム湖の水位の上昇とともに水面下に隠れてしまうという。
確かに川岸の様子から水面がもっと上にある時期があるのが判る。
というわけで、春になって再び訪れてみましょう!
雨だし・・・。
前回と全く同じ場所で写真を撮る。
車を止められる場所は限られているので仕方がない。
矢作ダムまで来ました。
前回よりも明らかに水位が上がっている。
これはもしや水没の可能性が高い。
結構強く降りしきる雨の中、ダム湖沿いの道を進む。
この右岸側は岐阜県、馴れてないせいか、なんとなく愛知県の道と違い走りにくい。
管轄が変わるとカーブの表示が微妙に違い、減速の表示がない。
こんなカーブは時速40kmでは絶対に曲がりきれないので、カーブを曲がる時の速度は自己責任ということだ。
雨に煙る湖畔の町。
この辺りは岐阜県恵那市串原というところ。
下界の喧騒とは打って変わって、平日とは思えないほど静かな風景だ。
貯砂ダムまで来ました。
ここにはちゃんと貯砂ダムを眺める為に車を止めるスペースがある。
(↑違うと思います。)
車のエンジンを止めても、ぼつぼつと降りしきる雨の音しか聞こえない。
いやに静かだ。
これはもしや・・・。
水位が上がっている。
うわーうわーうわー!
本当に埋まってるよー!
水は音もなく滔々と流れる。
本来の役目が機能していたならば、この貯砂ダムを境に水深が深くなる場所だったに違いない。
航空写真では、水没している姿が確認できる。
(Yahoo地図航空写真より)
矢作ダム上流貯砂ダム。
限界まで働いたことによりその役目を終え、今静かに余生を送る姿があった。
だから何だと言われればそれまでなんですけどね・・・。