趣味の木工

趣味と実益を兼ねた木工作業の数々

黒檀ミュートの接着


ぱっかーん!


コントラバスをはじめとする弦楽器にもミュートと呼ばれるものがある。


簡単に言うと音を小さくする道具なのだが、駒に重りをつけて振動を止めることにより音を小さくする。
駒の振動を止めると、楽器の音は鼻が詰まった歌声のような弱々しい音になる。

大きさも色々、ゴム製のものや木製のものがある。


一口にミュートと呼んでいるが、正確には弱音器(ミュート)と消音器(サイレンサー)に区別できる。


上は練習用の消音器(サイレンサー)、下の2つは弱音器(ミュート)。


練習の為に出来るだけ小さな音にしたいのが消音器。
この効果を利用して音色を変化させるアイテムとして使われているのが弱音器。


この2つの違いは重量にあり、重量が増すほどに振動を止めることになり、消音効果は高くなる。




作曲家はこの効果をうまく利用して表現の一つとしている。


楽譜に「con sordino(弱音器を使用せよ)」「senza sordino(弱音器なしで)」と指定がある。



ちなみにコントラバス用は笑えるほどでかい


上はコントラバス用、下はバイオリン用。





と、前置きがかなり長くなってしまったが、
この黒檀製のミュートが割れてしまったので接着することになった。




お預かりした、見事に割れてしまった黒檀製のミュート。

合奏の練習中に隣の人が手を滑らせうっかり床に落としてしまい、割れてしまった。


本番直前ではなくてよかった。
いざとなったらミュートは洗濯バサミでも代用が効くが、さすがにステージ上では使えまい。




黒檀(エボニー)はカキノキ科の常緑広葉樹。
黒くて固くて水に沈むほど重いので有名、磨耗に強く主に楽器や工芸品などに使われる。
よく似たもので紫檀(ローズウッド)はマメ科の木。
クラリネットなどの管楽器に使われるアフリカのグラナディラという木もマメ科の植物。
科目は違えど性質は極めて黒檀に近いので別名アフリカ黒檀とも呼ばれている。

黒檀は表面を磨くと金属のような光沢が出るが、割れた所を見ると木なのだと実感させられる。




黒檀や紫檀のような弾力がなく固くて重い木を接着するには瞬間接着剤が適している。

きっちりと固まって木の繊維同士の結束以上に強度が保てればいい。
瞬間接着剤は引張りにはすこぶる強いが衝撃には弱い。
まあ、黒檀もごらんのように落として割れるほど衝撃に弱かったのだから何とかイケるでしょう。


断面を見るとどちらも真っ黒。
染などせずとも真っ黒のいわゆる「マグロ」と呼ばれる上質の黒檀。


粘度の低い接着剤は接着する両面にたくさん塗り充分に染み込ませてから切断面を合わせ圧着。

とりあえず数分で固まるのでまずはその間は動かさずにしっかりとできるだけ隙間がないように圧着する。

木の接着で大事なのは木の繊維まで充分接着剤を染み込ませること。
染み込んだ接着剤が木の細かい穴の中で固まり、接着剤同士の決着力と合わさって保持する。
木目に沿って割れたのならば、うまく行えば木本来の部分よりも強度が出る。


自分なりに考えた接着の極意は・・・

取説の方法をしっかり守る。
接着面の汚れをとる、しっかりと加圧する、時間固定するなど、注意書きをきちんと守ればかなりしっかりと接着する。
接着後、他の部分をいかにきれいにするか。
はみ出た部分をすぐにふき取る、後で仕上げをするなど。
きちんと着いたかどうか確かめてはならない。
どこまで強度が保たれているのか、限界が判った段階でまた接着しなおしである。




しばらく放置して接着剤が完全に硬化した後、はみ出た部分はスクレーパー(カッターの刃など)でこそいでゆく。

 

管楽器の修理と違い多少削れても問題ないので大まかに削っていく。
もし隙間があるようならば接着剤と黒檀の粉で埋める。


サンドペーパーで表面を均して段差をなくす。


目で確認するよりも、指で撫でて段差が判らないように均す。



ミュートとしての機能的にはこのままでもよいのだが、油を染み込ませて保護、光沢が出るまで表面を磨けばベスト。



光にかざしてよくよく見ればかすかに線が見える程度で段差もなく、ほとんど判らなくなりました。






さて、これで完了と思いきや、別のところもくまなく点検したらヒビも発見。



ヒビの隙間に染み込ますように流し込んで接着、同じ様に表面を均して仕上げてほとんど判らないようになりました。

 


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