趣味の木工

趣味と実益を兼ねた木工作業の数々

ウクレレ割れ修理


 

こりゃまた痛々しい割れが入ってしまったウクレレ。


ナカニシ(中西)ウクレレのコンサートタイプ、ロングネック太田さんモデル。
旧品番で80Cだ。
「床の上でケースのふたを開けた状態で、棚の上から落下したビデオテープの直撃を受けた」らしい。





・・・誰の楽器ですか?


はい、この楽器↑です。
これはこれは矢橋先生。
また災難な・・・




 

作業に入る前に故障の具合を確かめます。鏡を使って内部の様子も観察。
直撃を受けた部分は凹み、サウンドホール下の力木の端がはがれ、トップが縦に亀裂。
重傷だが重体とまではいかない。


 幸いサウンドホールすぐ横なので、弦を張ったり演奏中に大きな力はかからない。イザとなったらピックガードを貼って隠すことも補強することも可能、穴から近いので補修も楽。ブリッジより下の部分だったら穴からの補修困難な上、大きな力がかかる部分なので大手術が必要だった。

 

ニカワを煮て接着補修の準備をしつつ、まずは凹みなおし。(やっぱり台所だし)

ニカワを流し込み、割れた部分を平らにするために内部に柱を立てて形を整える。


 

力木と縁の部分には力がかかるので特に接着を強化。鏡を見ながらの作業なので難しい。

ほぼ平面に接着が出来た状態。はみ出たニカワはあとで拭き取ることが出来る。



 

完全に乾かして接着は完了!このままでも弦を張って演奏には何の問題もないです。
わずかに残った段差、傷跡をどこまで修復できるか考え中。
部分補修にするか?(傷、色ムラが多少残るかもしれない)
トップ全部を一旦削って塗装をしなおすか?(全く判らなくなる)

眺め実習中。


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さて・・・数日後

接着した箇所はわずかですが平面ではありません。
スクレーパーとペーパーで段差を均してみます。

 

手で触ると段差があります。(あんた、まな板の上でんがな・・・)

削って平面にしますが、当然塗装は剥がれてきますわな・・・



・・・・・・・。




トップ(表板)全面の塗装を決意!



表板の塗装を木の地肌まで剥ぎます。

サンダーとか機械がないので、原始的なキサゲでちみちみ削ります。我ながら気の長さに感心。

 

塗装はトップコート、色塗料、下地塗装と掘り下げられていきます。

無傷の部分を削るのは、とっても悪い事しているような気分・・・。







力尽きました・・・。







 

眺め実習中・・・




さらに数日後・・・

気を取り直して、気合を入れて続きにかかります。
しばらくはカツオ節屋さんと化して、流しが削りくずだらけになりました。



格闘すること数時間。



ようやく色塗料の層は全部剥ぎました。

白く残っているのは目止めのための下地塗料。

 

下地塗料は柔らかいのでペーパーでみるみる粉になってゆきます。あっという間に流しが粉だらけ。

細かい部分はスクレーパーで削りながら、ようやく地肌まで到達。



一段落。



あとはこれからどんな塗装にするのか考えます。




 

眺め実習中。


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いよいよ塗装

通常この中西ウクレレの塗装は下地塗料、色塗料、クリヤートップコートの順に塗られています。
色、トップコートはウレタン系塗料が使われているそうです。



しかし家には色のウレタンニスがない。

なので染料系のステインであらかじめ木の地肌に着色してから、透明のラッカー系塗料で仕上げる方法にしました。

 

ステインは木の地肌によく染みる。まるで油性マジックで塗っているような状態。
たぶん板の裏側まで浸透しているはず。



ボロ布で刷り込むように均一にのばしてゆきます。



一度乾かしてからもう一度同じように塗りました。

なかなか高級感ある色合いになりました。横板との色違いもあまり気になりません。
とりあえずセルの上まではみ出かしてまったで後ではばかなかん。

だんだん口調が中西さんに似てきた・・・
(訳:バインディングの上まではみ出てしまったので後で削って落とさなければならない。)


この後、目止めの下地塗装はステインが充分乾いてから・・・。

眺め実習中・・・というより乾燥中。



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翌日・・・(たぶん)乾きました。


ステインを塗りこんだ時、縁のバインディングにまでついてしまいました。


スクレーパーで丹念に削ります。

ちみちみちみちみみちみちみちみちみちみちみちみちみみちみちみちみちみ・・・・・・・・・



ああ、楽しいなあ〜!!

採算や効率を全く考えない地道な作業。趣味の木工ならでは。




白い部分がくっきりすると全体が引き締まって見えます。




下地塗料にサンディングシーラーを塗っていきます。塗るというより「置く」という感じで塗っていきます。

この塗料は木に染みこんで固まり、木を硬くして表面を丈夫にします。
乾燥痩せが少ないので木肌の細かい穴を埋める役割をします。
今回、シーラーの前にステインで着色しているので、通常の直接木肌に塗りこんだ状態に比べて違いが出るはす。
良しと出る悪しと出るか、どんなサウンドの楽器になるのか楽しみでもあります。




げ!?

筆に色が・・・

ステイン溶けちょる・・・


もちろん想定はしていました。
油性のステインの上からラッカー系のシーラーを重ねたので当然ステインが溶けてきています。

なるべく木の部分だけに塗るように慎重に塗料を置いてゆきます。

ラッカー系の塗料なので台所中にハードなかほりが充満します。
換気扇フル稼働、乾燥は速いので1〜2時間でにほひは少なくなります。


せっかくバインディング部分を削ったのに少しはみ出て色がついてしまいました。
仕方がない、最後の仕上げの前にもう一度削ろうか・・・。

全体に塗りました。

シーラーの層は厚塗りが出来る上、固い割にはペーパーで簡単に削ることが出来ます。

しっかり乾燥させた後、ペーパーで平面だしをします。
木肌まで削ってしまうと色が落ちてしまうので慎重に削ります。

この段階ではまだムラムラ。

何度も塗っては削り、塗っては削りを繰り返します。

いきなり厚塗りすればきれいになりますが、あまり厚くするとサウンドによろしくありません。
出来るだけ薄く、平面にしなければいけないのです。

 

塗るとつやが出てきれい。削ると白くなってちょっと悲しい。

製作段階では、ブリッジや指板を貼り付けるのはもっと後なので、この平面出し作業は楽だが、
リペアの場合、指板やブリッジをよけながら行うので面倒だ。

つやが出て木目が浮き立ちます。いよいよ完成の形が見えてきました。




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塗っては乾かし、そして削り・・・眺め
塗っては乾かし、そして削り・・・眺め



そんな賽の河原のような作業をくり返すこと4回。

そろそろ自分がやっていることに疑問に感じ出す頃、ようやく平面が出てきます。


全体が白くなっています。


よく見るとほんのわずかに塗装の凹みが残ります。
タッチアップするようにシーラーを塗り、乾いた後に最後の研磨をします。

 この段階でどんなサウンドになるのか、験しに弦を張ってみました。オリジナルよりも塗装は薄くなっているはずなので軽いサウンドでした。このあとトップコートを吹くのでこのときよりも多少落ち着きますが、充分な音量があったので満足。最後の仕上げの準備をします。



マスキングをします。

外に出てラッカーを吹きつけます。
透明艶出しラッカーですが、少し距離を置いて少しずつ乾かしながら吹き付け、全体をつや消し仕様にしました。

ぷしゅー。

軽く吹き付けること5回。全体に出来るだけ薄く行き渡ったらよしとします。

ラッカーは乾きが速いので家に入ってすぐにマスキングをはがします。
完全に硬化してからだとマスキングまで硬化してはがせなくなる恐れがあります。

全体がまんべんなく艶消しになりました。
木肌に直接色が入っているので光の加減で色合いが変わり、美しく木目が浮き立ちます。



そういえば忘れかけていたが、元はといえばこれは割れの修理だった。もう割れた形跡はどこにもありません。

ラッカーはその後時間をかけて少しずつ乾燥し、最終的にごく薄い塗膜が残ります。

完成です。

あとは数日後に弦を張って終了!

当サイトでは楽器の修理改造調整等の依頼受け付けは行っておりません。悪しからずご了承ください。


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