マグロの解体セール


近所のスーパーで「マグロの解体セール」があるとチラシが入っていた。
何でも、店頭であのマグロを目の前でさばき、即売会を行うようである。


魚をさばく場所といえば通常まな板の上。
しかもうろこだの腸だの出るので流水が欠かせない。
しかし店頭にはそんな場所はなかったはずだが、そんな場所であのでかいマグロをさばけるのか?
あのよく知っている、いつものスーパーの一角でびちゃーとかべろーんとかするのか?




目の前で生き物がさばかれてゆく光景は、冷静に考えると残虐でグロい気がする。
しかも場合によっては生きたままかっさばかれてゆく。
そんな世にも恐ろしい地獄絵図を見て何を思うのか?




もうすぐ新鮮な魚が食える喜び>>>>>残虐、グロ




古来から海に囲まれて魚を食い続けてきた日本の長い歴史がそうさせている。
水族館でカニを見ると誰もが美味そうと思うほど常識化している。





そういえば最近あちこちでこの解体ショーやらセールやらのチラシを見かける。
世間では目の前でさばくのがどうも流行なのか?

この日、偶然にも午前中が休みだったので行ってみることに・・・。



会場は静かに準備が進められていた。

店は10:00開店、そして解体ショーが始まるのは10:30から。
そして解体直後からセールが始まる。



普段はごく普通の生鮮魚売り場、その一角で行う。
店頭に置かれた1m四方ほどのまな板が用意されていたが、床には特に何も敷いておらず解体ショーは思ったほどスペースは要らないようだ。

 

どーんと横たわるでっかいお方は、今朝市場で落としてきたキハダマグロ様で、この大きさで重量が81kgだそうな。
すでに腸は取り除かれ血抜きもされているので後は細かくさばくのみの状態。
これならば心配された「血まみれの地獄絵図」にはならずに済みそうだ。




マグロまめちしき

一口にマグロと言っても当然種類がある。

黒マグロ・・・・・・・・・・・・・・・・・いわゆる高級マグロ。本マグロとも呼ぶ。
南マグロ・・・・・・・・・・・・・・・・・本マグロの南半球版。別名インドマグロ。
めばちマグロ・・・・・・・・・・・・・・・・・赤身で寿司ネタとしてよく使われる。
きはだマグロ・・・・・・・・・・・・大きさも小ぶりで赤身が特徴。トロがない。
びんちょうマグロ・・・・・比較的安く売られていて脂が乗っていて美味い。

日ごろスーパーでよく見かけるのは下の3品目。
馴染みある庶民的な味でツナ缶にも使われている。




記念撮影している人もいた。

店側も珍しい光景なので写真撮影を奨励している様子。




平日の朝10:30だけあって、あまり混んでいない。
正直、もっと人の多い日や時間帯にすればいいのにと思った。
きっと仕入れの関係とかもあるのだろう。




あまり人が集らなさそうなので「では始めますか・・・」といった会話でもしているような雰囲気。

そしていよいよ始まった!

まず頭を落とす。

えらの所から出刃を入れてガシガシと切り込んでゆく。
見ていると意外と簡単そうだが実際には切る場所が難しいはず。


カマの部分が取れました。
「カマの部分、500円でどうですか!?」
声がかかる。


ううむ、確かに上質で美味そうなカマで、焼いたり煮付けたりしたら絶品だろう。
しかも500円とはとてつもなくお買い得。
しかしそんなでかいもん買って帰ったら食うのにも何日かかる。
家族5人が腹いっぱい食えそうな大きさで、さすがに恐れをなして誰も名乗り出ず。
最終的には売れてましたが。

とりあえず頭は用なしのようで、足元に置かれていました。

ライトやマイクアピールなど、派手な演出はない。
多少の説明はあれども、基本的に淡々と解体されてゆく。




でかい出刃がよく切れそうだ。

店のスタッフも遠巻き見ている。
このようなイベントが成功するかどうか気になるに違いない。




マグロ刀という長い包丁を使う。
さすがに大きいので大変そうだ。

まるで日本刀のような長さだが、刀身に反りがつけられていない。
そして鎬(しのぎ)は片方にしかなく、裏側は平面。
見ていると結構横方向にしなる。
これも刀にはない特徴か。




ほい切れた。

ここから先は助手に渡され、店の厨房で細かくされてパック詰めされる。



名古屋地方では肉や魚はスーパーで買うことがほとんどで、昔ながらの商店街での買い物は少ない。
かつて魚屋は氷の上に魚が平面に置かれ、肉屋はガラスの向こうに肉が並んでいて「○○を200g・・・」とか言いながら買っていた。
今やそんな店のほうが少数派になり、人々はパックされているもののほうが買いやすいようだ。
個人商店における人とのコミュニケーションが希薄になっているのかもしれない。



通り抜けつつ、遠巻きに横目で眺める人々。



解体セールを目指して来たというよりも普通に買い物にきたら偶然やっていた、そんな感じの反応だった。




群集の反応は、地方によって特色があるという。
東京では路上で何らかの出来事に遭遇した時、ほとんどの人は「見て見ぬふり」をする。
余計なものに首を突っ込んで危険なことに関わらないようにしている。

反面、関西では興味深々に多くの人が集ってくる。
積極的に人と絡むのがお好きなようだ。


そして名古屋地方はどうか?


「遠巻きに眺めてゆく」

これが名古屋の特徴とも言える。


あくまでも一般論としぶーの個人の感想ですべての人が当てはまるわけではありません。





試食が始まった!


そして何故かマグロの表面を丁寧に拭いている。


今さばいたマグロの一部が振舞われる。

さすがに人が群がってくる。
試食の効果あってか、集る人の数が一段と増えた。

やはり人からも「食い食いオーラ※」が発せられているのだろうか?

※食い食いオーラとは?・・・・しぶーのの仮説で、動物が餌を食うときに発せられる独特の電波。群れの片隅で一匹が餌にありつくと一瞬のうちに周りに伝わり集ってくることから、何らかの喜びの信号が発せられているのではないか?という仮説。




続いて残り半身の解体。
解体は意外なほど順調だった。

三枚におろすのがおよそ15分ほど。
もっと大掛かりで苦労するものだと思っていただけにその速さに感心してしまった。
生ものだけに迅速さも要求されるのだろう。

もちろんこの人の腕によるところもあるのだろう。
なんでも調べてみるとマグロ解体師という資格まであるらしい。

マグロの解体ショーというイベントは全国で人気のようで、出張解体ショーを専門で行っている業者もあるようだ。




あのでかいマグロがすっかり骨になった状態。
ということはこの生き物、ほとんど食うところではないか。

匙を使って骨の間の身を丹念にはがしてゆく。

いわゆるすき身というやつ。
形は不ぞろいだが比較的安いのでよく買うがここだったのか。

こうして無駄なく人々の胃袋に入ってゆくのですねぇ・・・。

試食に回ったすき身に群がる人々。
しまった!食いたかったが(写真を撮っている)この場所からでは遠すぎる!


始まる前や裏返した時に、始終マグロの表面を丁寧にふきんで拭いていたのが印象的だった。
皮の表面の美しさで商品価値が変わる訳ではないが、解体する人にとってマグロに対して妙な愛着が感じられた一面だった。






思ったほど派手ではなかった解体セール。
普段は魚市場の片隅や店の奥で行われる作業をショーにしてまおうという魂胆だが、日本人にとって馴染みの深い食材だけに興味のない人は居まい。
でかい魚が鮮やかにさばかれてゆく様子は、なかなか面白かった・・・。



もちろんゲットして帰りました。
その日の昼(買ってから20分後)にはすべて食ってしまいました。


この日このマグロは100g398円。(普段は100g680円だそうだ)
81kgのマグロの頭や骨を除いた重量は推定60kgくらいか?
単純計算この一匹で238800円か・・・。


趣味の部屋に戻る

TOP

inserted by FC2 system