趣味の木工
趣味と実益を兼ねた木工作業の数々 |
音叉箱を作る
我が家には音叉(おんさ)が多数ある。
楽器を演奏するにあたって調弦のための基準音を出す道具なので必需品でもあるが、近年は電子的なチューナーが主流。
まあ昔からある道具だし、アナログなところも気に入っている。
とりあえずあほかという数がある。
これでも実はまだ一部。
この音叉、つまみの部分を持って膝頭などの柔らかい場所でコンと打って耳を近づけるとかすかに音が聞こえる。
そのまま軸を硬いものに接触させると共鳴(共振)によって大きく聞こえる。
調弦の時には頭蓋骨に押し当てたり、耳をギョウザにしたり歯で咥えて使う人もいる。
いずれにせよ使っている最中は片手がふさがっている。
そこで共鳴箱とセットになったものもある。
付属の撥で叩くとポーンと大きな音が響く。
よく楽器屋さんの試奏室のテーブルの上などにある。
音響実験に使うのか、昔理科室でも見かけたことがある。
音叉を手に持って鳴らしたときに聞こえる微かな音に比べ、芸術的なほど豊かな音量で鳴り響く。
よし、これ作るとしようか。
とりあえず、手ごろな木片に穴をあけてぶっ刺してみました。
当然ながら中は空洞ではありません。
音叉は付け根の部分に球がついているので鉄ノコで分断しました。
この部分なら音程に影響ありません。
(音叉を調律する場合には長さを削るか、U字になった底の部分を削るかで調律します。)
ヨーロッパ型(削りだし)でないのでわざわざ溶接しただろうに、ここでちょん切られてしまうとは・・・。
さて、音叉は豊かに基準音を奏でてくれるのだろうか?
残念ながらこれしきの木片ではほとんど音は大きくなりません。
とりあえず手を離しても立っているという程度。
これでいろいろと実験してみるとしよう。
色々なものの上に置いてみると、やはり下が空洞なテーブルの上が一番よく響く。
当然といえば当然。
木製の箱をこさえてみました。
材木はブナの板。
以前木工(どこでもウクレレ君2号の製作)で使った余りがあったので使ってみました。
寸法がやけに小さいのは、余った木材の寸法が4cm幅と2cm幅だったのでそのまま使いました。
もしこれで製品並みとまでいかずとも、そこそこの性能ならば家庭用の小型音叉箱として活躍できるのではないか?という下心もありました。
この場合大きさは適当なので実験的に調節が出来るように底板は接着せずに動かせるようになっています。
結果・・・
鳴りません。
ほんの少し大きくはなるが、まあ気のせいくらいです。
底面が何かに接していればある程度響くが、持ち上げると聞こえなくなります。
箱の効果はほとんどないといってもいいでしょう。
しかしこれは共鳴箱+発音体という原理、まさに楽器の鳴る原理ではないか。
しぶーのの研究魂に火がつく。
(実はウクレレのボディの上に乗せて鳴らしてみましたが、期待したほど鳴りませんでした。)
ブナという材質のせいなのか?
もっと軽い材料を使えば鳴るのではないか?
というわけで、アガチス材(ホームセンターで売られている安くて軽くて加工しやすい木材)で同じものを作りました。
アガチスはギターの材料に使われることもある。
うんうん、これも鳴らない。
予想通り、材質による音の違いはほとんどなかった。
判ってはいたものの、やはり実験して検証せんとね。
材質かくにん、よかった。
ということは、設計のよろしくない楽器はどんなに贅沢な材料を使っても鳴らんということか。
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さて、この音叉箱、いや箱音叉とも言うべきか、世間に出回っている製品の現物を見たことはある。
音叉は挿してあるだけで取り外し可能、下の箱はスプルースか何かで、音響には理想的な材質。
タップトーンは(箱を叩いて音を出す)見事なA(ラ)の音程を持っている。
なるほど、この箱の大きさが重要で、音叉の音を増幅するのに最適な容積になっているのか。
外寸が書いてある。
だが肝心な木の厚さが書かれていない。
製品としては外寸は大事だが、性能としては内寸のほうが重要だ。
そんなこんなしているうちに、連絡が入った。
実はこの製品を所有する者に内偵を依頼していたのだ。
というわけで正確な寸法が判った。
早速アガチス材で製作。
実は厚みが足りなかったので、ある程度調節が可能なように底板は固定せず。
タップトーンは見事にA音になった。
これが非常によく鳴る。
指で軽く弾いただけでポーンと見事な音量だ。
左が完成形、右の二つは失敗作。
なるほど、やはり決め手はこの大きさか。
というわけで、試作したあと二つの音叉にも安住の地を与えよう。
ホームセンターで松の木が売られていたのでちょうどいい。
箱型のものを組み立てるのは意外と難しい。
固定に余り圧力をかけると板自体が歪んでしまう。
接着面は圧着すれば隙間なくつくが、しっかりと直角を保たなければ並行四辺形になる恐れがある。
ひとつは底を固定、ひとつは実験のために可動式にしました。
ところが・・・
底板を固定した箱をタップしたところ音程がAにならず、どちらかといえばちょっと低いG音になってしまった。
同じ寸法で作ったのに違いが・・・。
この段階で気づけばよかったのだが・・・。
底板可動式のほうで検証した所、数センチ切り詰めるとよいことが判ったので短くしました。
というわけで出来上がった箱部分。
後ろは晩飯の冷奴。
タップトーンは見事なA(ラ)音。
途中何故か計画と違って長さを切り詰めるというアクシデントはあったが、これはさぞかしよく鳴るに違いない。
「ちーん・・・」
??????
あれ?
確かに鳴るが・・・
こんなもんか?
箱をタップするとなんとF音。
(目指したのはA音、Fは比べてそれよりもかなり低い音)
そう、単純なミスだった。
タップトーンは音叉の重量を含めた音程だった。
音叉を外すとA(ラ)音、試しに重り(適当にその辺にあったクリップ)をつけたら少し下がってG(ソ)音。
しまったそうだった。
重要なのは内寸だけではなく、板の厚みや音叉などすべて含めた重量と容積のバランスだった。
ということは、楽器において板の密度やパーツの重量も影響し、単純に見た目の寸法だけコピーしても同じ性能の楽器は出来ないということになる。
なるほど簡単なことではないのか。
最初に作ったアガチスの箱、真ん中は切った切れ端をテープで仮止めしてみた箱、右は底板が可動式の箱。
この状態だとどれもよく良く鳴る。
タップトーンは左からA(ラ)真ん中と右はD(レ)。
それでもよく鳴るということは2倍音でも3倍音でとりあえず良く響くということか。
上に乗るA音叉は大きさも重量もそれぞれ違う。
単純に見よう見まねで作ったが、偶然成功したといったことろか。
結局真ん中の箱は短く切るべきではなかった。
とはいえ作ってしまったものは無駄に出来ない。
こうなれば開口部でなんとかするしかない。
ヘルムホルツ共鳴のように学術的な研究はあるが、到底しぶーのの頭脳では難しすぎる。
こうなったら試行錯誤で探るしかない。
開口部のふさぎ具合を変えると大きく響くポイントがあった。
ビブラフォンのような原理なのかな。
数ミリ単位の試行錯誤の結果ベストポジションを見つけました。
これなら外観を損なわないので、勢いあまって切ってしまった箱も無駄にならずに済みました。
せっかくなので撥(バチ)も作ってみました。
たしか販売されている製品はゴム製だった気がする。
木の円盤の周りに厚手の革を貼ったもの。
軸はコンビニでもらった竹の割り箸。
そこそこいい音が出ました。
あるところから入手したピアノのハンマー(本物)。
フェルトを圧縮して作られているので撥としても優秀なはずだ。
実際のピアノの中で駆動するハンマーは、打鍵の速度によりハンマーシャフトが後方にしなり、弦を打つ場所が微妙にずれて音色の変化になるというとても繊細なもの。
柄をつけて金属の音盤を叩けばまんまチェレスタの原理。
なるほど、非常によい音がする。
ただ、ハンマーの重みで下を向いて水平を保つのが大変なので、まあシャレですね。
(2014.7.8)